歴史上の「ブラック・ジャック」に学ぶ~医療の進歩と現在~

歴史上の「ブラック・ジャック」に学ぶ~医療の進歩と現在~

「全身麻酔」で劇的に進歩した医療

「近代麻酔の父」と呼ばれる米国の医師ウィリアム・モートンが、ハーバード大学のマサチューセッツ総合病院でエーテルによる全身麻酔を用いた手術の公開実験を実施したのは、1846年のことです。この全身麻酔の導入を境にして、医療は劇的な進歩を遂げるようになりました。
1881年には、オーストリアの外科医テオドール・ビルロートが世界初の胃がん切除手術に成功しました。彼の考案した術法には彼自身の名前がつけられ、現在も広く応用されています。その後、フランスの外科医アレクシス・カレルは、当時はまだ困難と考えられていた血管の縫合術法を考案し、1912年にノーベル賞を受賞しています。

開かれた臓器移植医療への道

こうした研究成果により、臓器を別の人に移植できる道が開け、外科医療における革命とも呼べる時代が到来します。1954年には米国の医師ジョセフ・マレーが、一卵性双生児の間で世界初の腎臓移植手術に成功しました。臓器移植における最も大きな課題は、移植される別の人の臓器に対する拒絶反応です。この難題に阻まれて、臓器移植手術の成功率はなかなか改善されませんでしたが、1970年に登場した高い効果を持つ免疫抑制剤「シクロスポリン」により、成功率は60~70%にまで向上しました。

日本における臓器移植の状況

日本では、1968年にある大学で心臓移植手術が実施されましたが、手術に至るまでのプロセスで多数の疑問点が指摘されて社会問題化し、その後の国内での脳死移植手術の停滞を招く結果となりました。1989年には島根医科大学で日本初の生体肝移植手術が行われ、それまで難しいと考えられていたこの手術の進歩に大きな貢献をもたらしました。
ここで紹介した歴史上に実在する「ブラック・ジャック」たちの業績に学び、日本でも、若い医師たちによる努力が続けられれば、臓器移植医療はさらなる進化を遂げることでしょう。

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東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 肝胆膵外科学分野 教授 田邉 稔 先生

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