「面白い」だけじゃない! 複合的な視点を持って映画を鑑賞しよう
映画を見るのは、とても難しい!?
海外の一部の国では高校で映画の授業を選択できます。日本ではこのような機会はありません。日本ではいまだに「映画を見るのは簡単だから、学ぶ必要はない」と考えられているのです。しかし、映画の持っている価値を理解するには、本当はさまざまな知識が必要になります。作品を鑑賞するときに、ストーリーよりも映像そのものに注意して見ると、いろいろな表現技法があることに気がつくでしょう。
映像に隠されたさまざまな技法とは
例えば、主人公の目線で撮影した映像を見せる「視点ショット」という技法があります。演劇と違って映画では、観客であるあなたが、主人公と同じ視点を共有することができるのです。あなたは主人公と一つになって事件を目撃し、主人公と一緒に驚いたり、喜んだり、悲しんだりします。このようにして主人公への感情移入がうながされるのです。
「視点ショット」が映画のどこで使われているのか。そこに作り手のどんな意図があるのか。こうした点に注目するだけで、映画の見方はがらりと変わります。
このほかにも、カメラのアングルや編集のリズムに目を向けましょう。俳優の動きや表情、その表情を照らすライティングも重要です。そこから心情や性格、成長の度合いなどを推し量ることができます。優れた映画は、主人公の目に見えない内面の変化を、目に見える映像によって描き出すのです。
作品の背景を知り、メッセージを探る
映像だけでなく、時代背景にも注目してみましょう。ハリウッド映画は明るいというイメージがありますが、1950年代に作られた作品の多くはどこか暗さがあります。それは米ソ冷戦下で人々が感じていた不安と無縁ではないのです。
映画は総合芸術であり、エンターテインメントですが、政治的に利用されやすいという怖い一面もあります。戦争中に敵国の残虐さを誇張するのに利用された例もあります。映画がどのようなメッセージを発信しているかを意識して見ることで、映画とより良い付き合い方ができるでしょう。
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名古屋市立大学 人文社会学部 国際文化学科 准教授 川本 徹 先生
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