シェイクスピア作品は、なぜ時代や地域を超えて愛され続けるのか?

シェイクスピア作品は、なぜ時代や地域を超えて愛され続けるのか?

400年前の作家が、今なお支持される理由

シェイクスピアは、16世紀から17世紀にかけて活躍した作家ですが、現在でもその作品は英文学の傑作として世界中の人たちに親しまれています。その受け止められ方は、時代や国によって異なりますが、その魅力の一つは、さまざまなアレンジや解釈が可能な彼の作品の懐の深さにあると言えます。

優れたバランス感覚の人

シェイクスピアは、バランス感覚に優れた人でした。彼の物語の多くは、当時のイギリスを舞台とはせず、遠い外国や過去を舞台にしたものばかりです。当時は演劇の上演にも検閲がなされ、国王や国家、教会に対して、批判したり諷刺したりすると取り締まられることもありました。シェイクスピアは、時にはそういった要素を盛り込みながらも、「これは昔の話ですから」「あくまで外国が舞台です」とうまく立ち回って作品を次々に発表し、人々の心をつかんでいきました。
このバランス感覚は、時の権力への対応の仕方だけでなく、王族から庶民に至るまで、あらゆる層の人を楽しませる作品を書いたという意味も含みます。「いかようにも解釈できる」バランス感覚と主題のよさが、後の時代に多くの翻案作品を生み出していくのです。

ハッピーエンド? 戦国時代? の『リア王』

実際、彼の死後半世紀ほど経った1680年代には、四大悲劇の一つ『リア王』が、結末をハッピーエンドに変えて上演され、大ヒットしました。その間、イギリスでは革命によって時の国王が処刑され、新たな王が迎えられるという歴史的な事件がありました。その世情から、当時の人たちにはガチガチの悲劇より、めでたい作品が好まれたことがうかがえます。
日本でも、『リア王』をモチーフに作られた黒澤明監督の映画『乱』は有名です。シェイクスピアもまさか自分の作品が、日本の戦国時代に舞台を変え、映画化されるとは夢にも思わなかったでしょう。このように、映画であれ舞台であれ英語の原著であれ、時を超えたシェイクスピア作品の奥深さに触れることができるのです。

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立正大学 文学部 文学科 英語英米文学専攻コース 准教授 伊澤 高志 先生

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メッセージ

私のゼミのモットーは「よく遊びよく学べ」です。高校生時代の私は決して褒められたものではありませんでしたが、浪人時代は心機一転、受験勉強に励みました。予備校の先生との出会いから英語の面白さに目覚め、高校の英語教師になることを思い描きながら大学に入学しましたが、大学で学ぶうちに英文学の世界にはまり、今に至ります。
十代の時間はとても貴重です。自由を謳歌するもよし、部活に打ち込むもよし、ただ漠然と過ごすのではなく、「自分はこうする!」と決めた上で、存分に楽しんでください。

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