フランスにおける異文化の意味
始まりは興味本位
15世紀から17世紀前半ごろまで続いた大航海時代、ヨーロッパの列強は非ヨーロッパ圏の国々で覇権争いを続けました。
フランスもインドシナ半島やアフリカなどを植民地化しています。当初彼らにとって植民地は、フランス語の教育やキリスト教の布教を一方的に行う場でした。しかし18世紀になると、自分たちが持たないエキゾチックな文化を取り入れようと考えます。特に19世紀以降、フランスの絵画や音楽に、アジアやアフリカの影響が現れます。日本の浮世絵なども「ジャポニズム」として珍しがられていました。
植民地から文化を発信
1900年のパリ万博では、「オッペケペー節」で有名な役者・川上音二郎が大好評を得て、妻である貞奴が着たドレスが社交界で流行したと言われています。しかし、フランス人が考える「エキゾチック」とは、あくまで物珍しさの域を出ない程度で、自分たちが絶対と信じる価値観を曲げることはありませんでした。
ところが20世紀も後半を迎えると、「前衛(アヴァンギャルド)」と呼ばれた芸術や文学も息詰まりを迎えます。その時に現れたのが、かつて植民地だった国々の人たちです。例えば、カリブ海に浮かぶフランス領マルティニーク島出身のパトリック・シャモワゾーは、1992年に『テキサコ』という小説で、フランスの芥川賞と言われる「ゴンクール賞」を受賞しています。
文化は国境を越える
現代のフランス文化はどうかと言うと、言葉の問題がある文学はともかく、映画界ではかつてのフランス映画のイメージを覆す作品が数多くつくられています。その代表が『エターナル・サンシャイン』などで知られる監督、ミシェル・ゴンドリーです。彼の活躍の場は、今やハリウッドにもおよんでいます。
日本の映画監督・北野武や作家・村上春樹などもフランス国内で高い評価を得ています。今や「おもしろい」「素晴らしい」に、国境はなくなりつつあります。つまり、かつて政治や社会の動きに翻弄された文化が、現代では何より先に、ボーダーレス化を果たしたと考えられるのです。
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