ミカンの謎を解き明かし、ミカン離れを食い止めよう!
温州ミカンはすべてクローンだった
日本の果物の代表格とも言えるミカンですが、知られていないことがたくさんあります。約500年前に中国から伝わった種子の偶発実生(ぐうはつみしょう)で生まれたとされる温州ミカンは、花粉が発達していないので種ができません。そのため、昔からずっと、接ぎ木で増やされてきました。つまり、すべてクローンということになります。ミカンは気温が下がるにしたがって、橙(だいだい)色へと色付きます。この橙色の色素「β-クリプトキサンチン」こそ、ミカンの魅力なのです。
橙色の色素成分に含まれるありがたい効能
ミカンの橙色は、一見、オレンジなどの色と同じように見えますが、科学分析すると、色素の構成が異なっています。そして、ミカンに特に多く含まれる色素「β-クリプトキサンチン」の成分には、体にいい効能がたくさんあることが明らかになっています。つまり、ミカンをたくさん食べてきた日本人は、知らないうちにその恩恵を受けていたのです。具体的には、抗酸化作用による発がん抑制効果や骨粗鬆症の予防などです。また、ストレスの軽減や生活習慣病の予防にも期待が寄せられています。そして、最も多くこの色素が蓄積されるのがハウスミカンであることもわかっています。
ストップ! ミカン離れ。 おいしいミカンを追究
このように、ミカンは日本人にとってありがたい果実ですが、ミカン離れが進んでいます。10年間で東京ドーム1600個分のミカンを栽培している面積が減少し、購買量も減って市場価値も下がってきています。この流れを阻止するために、オレンジなどにはない魅力を見いだし、より甘くて、皮の色が濃くむきやすい、機能性成分の多いミカンの研究が進められています。
例えば水分ストレスを与える、つまり水分を不足させた状態で栽培すると、甘い果実をつけることがわかっています。このように、果実の成分や特徴を分析することにより、どのような栽培方法や栽培環境が適しているかを導き出した研究成果は、社会に役立っているのです。
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先生情報 / 大学情報
静岡大学 農学部 生物資源科学科 教授 加藤 雅也 先生
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