医療に用いる放射線と診療放射線技師の仕事とは
放射線とX線の違い
X線と放射線、どちらもよく聞きますが、その違いについて考えたことはあるでしょうか。放射線には、α線、β線、γ線、陽子線、電子線、中性子線などさまざまなものがありますが、X線もその中のひとつというのが答えです。X線だけ突出してよく耳にするのは、人間が製造した装置によって、比較的簡単に出すことができ、画像化するのに適した性質をもっているからです。このX線は、1895年ドイツのレントゲン博士により発見されましたが、この年は、人類が初めて放射線の存在を知った年であり、またすべての放射線医学の始まりの年であったとも言えるのです。
放射線治療について
放射線は、病気を見つけるだけでなく、放射線治療としてがんを治す役割も担っています。診断と比べて大量の放射線量が必要なので、「放射線が正常組織に当たるのを極力避けながら、がん細胞に正確に照射する」ことが技術的に重視されます。その意味から、近年の放射線治療の進歩は、治療装置の進化のみでなく、病巣の位置を正確にとらえる意味でCT、MRIなどの装置の進化のほか、放射線量を正確に計算するコンピュータも大きく寄与していると言えるのです。現在はリニアックという放射線治療装置が主流で、高エネルギーX線と電子線を照射でき、病巣が体の深部であれば、X線、表面近傍であれば電子線といったように、がんの位置によって放射線の種類を選択しています。
職業としての診療放射線技師
診療放射線学(診断・放射線治療・核医学)の中で、放射線には、病気を見つけ、そして治す観点から、診断(画像の話)と放射線治療の2つの役割があります。例えばX線は、双方に利用される点で重要ですが、用途によって、使用する装置や、エネルギーが違います。すべての放射線を理解し、適切に用いることで医療に携わるのが診療放射線技師の仕事です。主に装置を扱う一方、医療人として患者さんに思いやりをもって接する仕事でもあります。この両輪を満たしてこそ尊い仕事と言えるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 医療技術学部 診療放射線学科 准教授 菱木 清 先生
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