空手の極意から考える、日本の自衛権のあるべき姿とは?
伝統的な空手が重視する理念
空手とは、琉球王国だった頃の沖縄で生まれた武術です。沖縄の土着の拳法「手(ティ)」が、中国武術や日本武術の影響を受けながら発展してきたと考えられています。「空手」と聞くと、強靭な肉体を持つ空手家がバットや瓦を一撃で粉砕したり、試合で激しくぶつかり合ったりしている様子を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし、伝統的な空手では、そうした好戦的なイメージとは対照的な理念を重視しています。
日本の自衛権は空手の理念に通じるものがある
空手の極意とは、相手に「弱み(隙)を見せない」ことです。また、空手の根本原則として、「空手に先手なし」という訓戒があります。空手家はけっして自分から先に手は出しません。自ら敵を作るのではなく、可能なかぎり「戦わずして克(勝)つ」状況にすることが重要だと考えているからです。そして、一撃必殺の威力を発揮する「極め」の鍛錬を怠らないようにする一方で、その一撃を3センチ手前で止める「寸止め」によって、相手に怪我をさせることを防ぎます。
こうした空手の理念は、日本の自衛権について考える上で、参考になる要素を数多く含んでいます。他国に弱みや隙を見せない必要最小限の「抑止力」を持つことは国土防衛の理想的な方法ですし、その上で「専守防衛」に徹することも、国土防衛の根本原則として厳守しなければならない点だからです。
国を守るために必要なこととは
日本の自衛権に関する政府の見解は、必要最小限の「抑止力」で「専守防衛」に徹するという姿勢に関しては、おおむね一貫してきました。その中でも、専守防衛に徹する上で、どこまでがギリギリのラインなのかということが、日本国内ではこれまで検討され続けてきました。
国土防衛の根本原則の堅持と国際的な平和維持への貢献との兼ね合いや、争いを未然に防ぐための周辺諸国との良好な関係の維持など、日本の自衛権についての議論は、これからもたゆまず積み重ねていく必要があります。
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帝京大学 法学部 政治学科 教授 鬼頭 誠 先生
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