魅力的なまちをつくるために、住民の力を引き出す

魅力的なまちをつくるために、住民の力を引き出す

住民参加で進める観光まちづくり

日本各地で住民参加型のまちづくりが行われています。なかでも長野県小布施(おぶせ)町の取り組みはユニークです。まちぐるみで江戸時代からの「小布施らしい」景観をつくることを推奨し、住民や事業者が主体となってまち並み修景を成功させました。さらに「オープンガーデン」の取り組みでは、有志の個人や事業者が自分の庭を花や植物で彩り、観光客に楽しんでもらうということを行っています。このことから、庭づくりを通じて観光客と交流を楽しむ住民が増え、その結果、小布施は「歩いて楽しいまち」として高い評価を得ています。

住民が気候変動対策の主体になるためには

現在、各自治体が気候変動対策に乗り出して、太陽光発電の拡大や交通インフラの整備、シェアサイクルの導入など、環境政策が進められています。この環境政策においても、住民が主体となることが求められています。例えば、焼却時に大量のCO₂が排出されるごみの減量化には、住民の協力が不可欠です。特に水分を含む生ごみが多いと、処理施設の燃焼効率が悪くなります。長野県東御(とうみ)市では、住民によりごみの分別を徹底するだけでなく、生ごみを堆肥化し土に返す取組みが進められ、県内の市部では最もごみ排出量の少ない自治体となりました。

まちづくりの主人公は住民

まちづくりは行政が主導し、公共事業や規制により推進されるイメージがあるかもしれません。しかし、景観まちづくりのルールを作るには、そこに暮らす住民の合意が必要です。環境対策にしても、自動車を使う頻度を下げる、ごみの量を減らすなど、住民の意識改革と行動変容が重要です。つまり、住民の間に「どういうまちをつくるか」というビジョンの共有が必要であり、それをまとめ地域住民のパワーを引き出すことが行政や公務員の仕事なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

長野大学 環境ツーリズム学部 環境ツーリズム学科 教授 久保木 匡介 先生

長野大学 環境ツーリズム学部 環境ツーリズム学科 教授 久保木 匡介 先生

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行政学、地方自治論

先生が目指すSDGs

メッセージ

まちづくりには様々なアプローチがあり、各地で展開される事例も多様です。自分が住んでいる地域がどんな課題を抱えているのか、町内会や商店の方、自治体職員に話を聞いてみてください。どうしたら魅力のある、活気あふれるまちがつくれるのか、どういうお店があれば住民は楽しいのか。当事者の方々も外部からの意見を求めています。高校生の頃から実際の問題に向き合う経験をしておくと、なんのために地方自治やまちづくりを学ぶ必要があるのか、具体的にイメージできるでしょう。

先生への質問

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長野大学は、1966年に地域の熱い期待を背負って誕生した「地域立」の大学です。本学は地域にある課題を発見し、地域とともに解決していく実践的な学びを大切にしています。地域には豊かな自然環境や歴史が宿る文化遺産、経済を牽引する産業や観光資源、安心して暮らせるまちづくりなど学びの要素があふれています。地域社会をフィールドに、主体的に考える力や、問題に対して多面的に取り組む力を養いながら漠然とした問題を明確化し、逆境に立ち向かっていける足腰の強い人材を育成します。