「林業ビッグデータ」を国産木材の加工・流通に生かす
あるのに使われていない国産木材
木を伐るということを考えてみましょう。東南アジアや南米では、熱帯雨林の伐採が問題になっています。しかし、日本では、定期的に木が伐られずに荒れた里山が問題になっています。つまり、場所によって伐ってはいけないところと伐った方がよいところがあるということです。
日本は国土の約3分の2が森林ですが、2019年の木材自給率は37.8%です。国内で使う木材の多くを、アジア諸国やヨーロッパ、アメリカなど海外からの輸入に頼っています。日本では今、戦後に造成された人工林が育ち、木材として利用できる大きさになりましたが、使われていないのです。
ドローンを使って、今の森林の姿を探る
森林の木を利用する時は、森林にどのような高さ、太さの木がどのぐらいあるのかを調べて、伐り方や売り方を考えなければなりません。これまでは、ある一定の範囲の調査結果や、人工衛星や航空機から撮影した画像データから、森林全体の資源量を推測してきました。ここ数年で、ドローン(無人航空機)を使い、森林の状態を探る方法も広がっています。ドローンで森林をいろいろな場所から撮影した画像データを専用のソフトウェアで三次元に復元し、森林の形や大きさを調べます。最近では、ドローンに搭載したレーザ計測機で、より正確に森林の姿をとらえられるようになりました。
ICTの活用で、国産木材の流通を効率化する
日本では、木を伐ってから、木材市場で売って加工・製品化され、最終ユーザーに届くまでのシステムが複雑です。外国産の木材のように、注文に応じたサイズや量を安定して供給する体制が十分に作れていないという課題もあります。そこで現在、ドローンで計測した森林のデータを、「林業ビッグデータ」として木材の加工・流通に生かす研究が行われています。林業分野でICT(情報通信技術)の活用が進み、必要な時に、必要なサイズ・量の木材を供給する仕組みが確立されれば、国産木材の消費量が増えると期待されています。
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先生情報 / 大学情報
鹿児島大学 農学部 農学科 環境共生科学プログラム 森林計画学 准教授 加治佐 剛 先生
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