安全な原子力プラントの開発に、「流体力学」からアプローチする
「高速増殖炉」の研究と開発
世界では今、新型の原子力発電の研究と開発が活発に行われています。その中心は「高速増殖炉」です。従来の「軽水炉」は「ウラン235」を使いますが、実はウラン235は地球上のウランの1%以下の量しかなく、このまま使い続けると数十年でなくなってしまいます。一方、高速増殖炉で使用するのは「ウラン238」です。これは残りの99%にあたり、ほぼ半永久的に使えるだけの量があることがわかっています。ここに、高速増殖炉に期待が集まる理由があります。もちろん、開発にあたって安全性が最も重視されていることは、言うまでもありません。
原子炉の配管の安全性を追求
軽水炉でも高速増殖炉でも、安全性を考える上で重要なポイントとなるのが配管です。原子力発電は、核分裂によって生じたエネルギーで湯を沸かし、その蒸気でタービンを回して発電する仕組みです。これは火力発電も同じ原理です。つまり、原子力プラントの配管の中では、炉心で核分裂反応によって発生した熱を流体が受け取り、蒸気となってタービンを回し、その後、再び冷却されて元に戻り、再び炉心で熱を受け取るという循環が形成されています。この過程で、管にトラブルが起こると事故につながる危険性が高くなります。特に高速増殖炉の流体は、酸素と反応して化学反応し発火しやすい液体ナトリウムであり、管のトラブルが重大事故につながる可能性があります。
流体力学の成果を応用
どのような液体が流れるにせよ、管には「詰まる」「破ける」「漏れる」というトラブルがつきものです。その身近な例が血管です。血液が常に流れている血管は、血栓ができて詰まったり破れたりすると、命と健康を脅かします。管のトラブルがなぜ起こるのかを「流体力学」の観点から詳細に解明できれば、それを原子力プラントの配管にも応用できます。そこで現在、血液の流れのような微小なスケールで解明された流体力学の成果を原子力プラントの巨大な配管に適用し、より安全なプラントの建設を可能にする研究が進められています。
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先生情報 / 大学情報
東京都市大学 理工学部 原子力安全工学科 教授 鈴木 徹 先生
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