植物の不思議な能力が人類と地球を救う!

植物の不思議な能力が人類と地球を救う!

地球温暖化で農業が危ない?

地球の温暖化が進むと、地表の水分が蒸発し、土壌が乾燥したり、土壌中の塩類濃度が上昇したりして、砂漠化が進みます。あるいは、洪水によって土壌流出が起きると、土壌が劣化します。世界では耕作地のおよそ4割が、このような農業のできない土地だと言われています。
しかし、一方で、塩分がたまった土地ではマングローブが、乾燥した土地ではウリが、劣化した土地では雑草が繁殖して生きています。このような植物の力をうまく活用すれば、ストレスの多い土壌でも農業ができ、食糧問題を解決できると考えられます。

タバコ属植物の不思議な能力

農業では2000年以上も前から、異なる植物の地上部分と根っこ部分をつなぐ「接ぎ木(つぎき)」という技術が行われてきました。これは病気に強い植物と、大きな花やおいしい実のなる植物を使い、長所をいいところ取りして、人間に役立つように利用してきたものです。しかし、人間と同様に、植物にも免疫機構があり、科や属が違うと拒絶反応が起こります。トマトならナスなど、近い種同士しか接ぎ木できないのがこれまでの常識でした。
ところが2013年に、ナス科タバコ属の植物を使ったところ、マメ科・アブラナ科・ウリ科に加えて、穀物・果樹・樹木との接ぎ木に成功したのです。つまりタバコ属の植物を接着材にすれば、近い種同士でなくても植物を接ぎ木することが可能なのです。

コミュニケーションする植物

また、近年は、植物にコミュニケーション能力があることも明らかになりました。葉が虫に食べられそうになった時、その場から逃げられない植物は、例えば虫にかじられないように「トゲをつくったほうがいいよ」というシグナル(信号)を送るのです。
このような植物の能力と接ぎ木の技術を生かせば、ストレスに強く人間にとって有用な植物を、品種改良するよりも速くデザインし、量産できるはずです。しかもそのように栽培された植物は農薬の使用を減らし、「持続可能な社会」にも貢献できるでしょう。

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先生情報 / 大学情報

名古屋大学 農学部 資源生物科学科 助教 野田口 理孝 先生

名古屋大学 農学部 資源生物科学科 助教 野田口 理孝 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

植物科学、生物科学、農学

メッセージ

植物は、地球上で人間と共存する仲間であり、私たちは植物が光合成をして蓄えたエネルギーを得ることで、生きていくことができるのです。つまり植物とうまく共存していかないと、人類の未来はありません。そこで植物を深く知る学問が重要になってきます。
近年、植物や農業の分野でも、データ科学や化学、ロボティクスなどのエンジニアリング技術との関わりが進み、さらに研究の可能性が広がりました。あなたも植物に関心があるなら、あるいは環境問題を解決したいなら、一緒に研究しませんか。

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名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。