植物の力で環境を浄化! 有害物質吸収植物や早生樹の活用
土や水の汚染には自然由来のものも
環境問題は、古くから形を変えて存在しています。日本の高度成長期には公害が引き起こした病気が問題になりました。近年は気候変動に関心が集中していますが、公害がなくなったわけではありません。人為的なものだけではなく、自然由来の汚染もあります。例えば、多くの温泉の成分には微量のヒ素が含まれます。温泉業者は規定値以下に薄めて流して廃棄しますが、流れていった先でたまってしまう場合があります。東日本大震災では、それまでに海底に堆積した汚染物質(ヒ素)が津波で陸上に打ち上げられて、その除去に多大な費用が必要となりました。
植物を利用した土壌・水の浄化
このような被害を防ぐ、低コストかつ自然と調和する方法として、植物の活用が検討されています。植物には有害物質をため込みながら成長するものがあり、その数は、現在知られているだけでも850種におよびます。その中から汚染物質と地域の気候に適したものを選んで育成できれば、費用や手間をかけずに環境を浄化できます。汚染物質の濃度によっては、有害物質吸収植物であっても枯れてしまいますが、自然由来の場合は濃度が低く、影響する場所が限られていますから、植物が役立つことに期待できるのです。
早く育つ樹木で炭素を回収する
植物は気候変動の問題解決にも役立ちます。植物がCO₂を吸収することはよく知られていますので、CO₂をより多く回収する方法として植物の吸収量を増やすことが考えられます。日本にはスギやヒノキの林が多くありますが、いずれも成長するまでに50年近くを要します。より早く成長する樹木を植えれば、同じ面積と時間でより多くのCO₂が回収できるでしょう。この仮説を検証するために早生樹のキリを使った実証実験が行われた結果、炭素の蓄積量がスギの4.7倍におよびました。早生樹は短期間で木材として出荷できるため、林業従事者にとって経済的なメリットもあります。今後、早生樹の持続的な育成方法の研究がさらに進められる予定です。
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北九州市立大学 国際環境工学部 環境化学工学科 講師 菅原 一輝 先生
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