すべてが自己責任、アメリカンドリームの本当の意味
さまざまな差別が存在するアメリカ社会
アメリカには「アメリカンドリーム」があると言われていますが、誰もが自分の夢を実現できるわけではありません。実際には、人種、階級、性別の違いによる差別が存在するので、特定の集団しか実現することができません。この特定集団の中枢にいるのは白人男性です。ところが、白人男性であっても、学歴、家柄、職業などによって格差が広がっており、これが一部の白人男性がアメリカ政治や社会に不満を抱く要因となっています。
アファーマティブ・アクションの弊害
人種や性別の違いから生じる格差を是正するために「アファーマティブ・アクション」という優遇政策があります。黒人、ヒスパニック、先住民、女性などのマイノリティ集団に対して、進学、就職、昇進に優先枠を設けるのです。しかし、この制度は弊害を生んでいます。白人とマイノリティ集団との差は厳然とあるものの、一部の白人はこの制度のために優良な大学や企業に入ることができません。これが、マイノリティ集団に対する反発・暴動へとつながる要因の1つと考えられます。
自己責任社会
アメリカの成功者の間では、アメリカンドリームを信望する人たちもいます。アメリカンドリームには「努力すれば成功する」という意味が含まれています。裏を返せば、結果がでないのは努力が足りないことを意味しますが、これは本当なのでしょうか。特定集団だけが得をする仕組みがアメリカ社会にあることから、個々人の努力と社会での成功には関係性が乏しいです。しかし、この考え方の根底にあるのは「自己責任」です。社会的立場の弱い人たちに不満を抱かせず、現状を納得させるには都合のよい説明方法なのです。しかし、アメリカ人はどんな境遇であっても自分をさらけ出します。相手に正しく理解してもらうには、黙っていては伝わらないからです。
今後の日本にも多種多様な人たちが集まってくるはずです。アメリカ社会を参考にしつつ、少しでも居心地のよい日本を共に作っていこうという覚悟が必要なのです。
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先生情報 / 大学情報
西南学院大学 外国語学部 外国語学科 教授 山元 里美 先生
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