契約の履行期前に履行を「拒絶」されてしまったら?
履行期前拒絶とは?
例えば、あなたが誰かと中古自動車の売買契約を交わすことになったとします。あなたが3月31日に代金を支払って、車を引き渡してもらうという契約です。ところが相手は3月20日になって、「ほかにもっといい買い手が現れたので、あなたには売らない」と言い出しました。そのとき、あなたは、どうすればいいでしょう。「契約違反だ」と相手を訴えようと考えるのが普通ですが、これまでの民法の規定では、実はこのケースは契約違反には当たらない可能性があったのです。
契約違反に対する救済方法とは
民法では、債務不履行(契約違反)を3つの類型に分けています。支払いなどの履行が遅れる「履行遅滞」、履行が不可能な状態になる「履行不能」、契約通りの履行になっていない「不完全履行」です。しかし、契約の履行期日前に拒絶した場合は、「履行遅滞」にはなっていませんし、履行が不可能というわけではないので「履行不能」にも当たりません。ですから、債務不履行には相当しないと考えられます。もちろん、あなたは期日まで待って、履行がなければ相手を訴えることはできます。ですが、期日前にその結果がわかっているなら、早めに契約を解除して、ほかの中古自動車を探したほうが、あなたの損失を少なくすることができます。もし契約解除によって損失が生じた場合、法律上はどういう救済方法があるのか、そういうことを検討していくのが、法律学、特に民法に関わる研究の一つです。
当事者同士が納得できる解決を
公権力が個人を拘束したり、罰則を与えたりするためのルールを定めた法律である「刑法」には、かなり厳格な定義と運用が求められますが、民法は、刑法に比べると緩やかさがあります。契約上のトラブルに関しても、民法規定を厳格に適用するより、当事者同士が納得できる解決を優先するという考え方があるからです。
そのため、トラブルが発生したときに、法律や裁判の判例をどのように適用してトラブルを解決するかということが、民法での重要な研究テーマとなっています。
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帝京大学 法学部 法律学科 講師 内田 暁 先生
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