運動時の体の変化を知り、病気の治療や予防に役立てる
体内の見えない変化を計測する
立ったり座ったり歩いたり、人が体を動かす時は体内の臓器が対応して動いています。そのため、「心臓が悪い人は動くと負担になるので安静にする」ということが常識とされていました。しかし今は、治療の一つとして運動療法が積極的に取り入れられています。
けがや事故が原因の外科的疾患の場合は筋肉や関節の状態を把握し、リハビリ方針を決めることができますが、心臓などの内科的疾患の場合は、安全な運動を評価するために運動負荷試験を行います。運動中および運動前後の心電図や血圧を測定し、代謝や血液循環、呼吸の変化をリアルタイムに見ながら、患者さんの身体状況に応じた運動療法を考えていきます。
運動はあらゆる病気の予防や治療に不可欠
アメリカでは死因の第1位が心臓病であることから、古くから心筋梗塞(こうそく)などの内科的疾患にも積極的に運動療法が実施されてきました。医療と運動療法の連携が重要視され、医師と運動の専門家は対等な立場で治療後の運動方針を検討するのです。一方日本では、かつて、治療方針はすべて医師が決めるものという考えが一般的でした。そこで、心臓疾患の再発予防や発症そのものの防止にも役立てようと、2000年に「心臓リハビリテーション指導士」の認定制度がスタートしました。受験資格は医師や看護師などの医療従事者のほか、適切な運動プログラムを提案し指導できる健康運動指導士にも与えられています。
運動は地域を元気にする
高齢者や障がい者の身体機能低下の防止や、健康の維持・増進にも運動は不可欠です。また、運動を地域活動として行うことで、地域住民の共助や絆を生み、それが緊急時に力を発揮することもあります。東日本大震災に直面した住民たちは、震災前から続けていた地域活動を自主的に再開することで、体を動かし元気になり、困難を乗り越える一助になったという研究結果も報告されています。誰でも、どこででもできる運動を地域活動に取り入れることは、平時でも、災害時にも役立つのです。
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東北福祉大学 健康科学部 医療経営管理学科 准教授 河村 孝幸 先生
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