1歩ごとに変化する、スプリント走に必要な技術と体力
限られた時間の中で
100メートル走などのスプリント走は、人間の基本的な移動運動の一つであると共に、ほかのさまざまなスポーツでも必要とされる運動です。こうした運動で人間が一度に利用できるエネルギー量はごく限られており、スプリント走で加速し続けられるのは、5~7秒程度でしかありません。記録の向上には、この5~7秒の中で、到達できる最高速度を高めていく必要があります。
区間によって異なる必要な体力特性
スプリント走における身体の動きを分析すると、速度が上がるにつれて身体の姿勢も変化し、各区間で必要な体力の特性も変化していくことがわかります。
スタートしてから最高速度に達するまでの区間は「加速局面」、最高速度に達してからゴールするまでの区間は「減速局面」と呼ばれています。加速局面の中で、スタートしてから最初の5メートル程度は初期加速区間とされています。この区間では、身体特性の個人差によって、歩幅とピッチのどちらを重視すべきか、やや複雑な判断が必要になります。
5メートル以降から25メートルくらいまでの区間は第2加速区間と呼ばれており、垂直飛びの際に用いるような、下肢と股関節を伸展させる力が必要になります。その後、25メートル以降から50メートルくらいまでの第3加速区間では、足首を底屈(かかとを上げてつま先を伸ばす)させる力や、伸ばした膝を引き戻す力など、各関節の動きの強さも求められるようになります。
戦略よりも、加速に必要な技術と体力を
最大速度に達した後、ゴールするまでの減速局面では、最大速度の身体の動きをできるだけ維持することが必要です。ただしスプリント走においては、限られた時間の中で最大速度をできるだけ上げていくことの方がより重要です。加速局面で最大速度を上げれば上げるほど、ゴールまでの減速区間は短くなるからです。「後半に備えて力を温存」といった戦略よりも、区間ごとに必要な技術と体力を着実に身につける方が、スプリント走ではプラスとなると考えられています。
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