見えない図をどう共有する? インクルージョン教育の支援ツール

見えない図をどう共有する? インクルージョン教育の支援ツール

同じ授業でも受け取る情報は違う

障がいのある人とない人が同じ教室でともに授業を受ける「インクルージョン教育」が推進されています。インクルージョン教育では、障がいの有無にかかわらず情報を同時に共有するためのサポートが必要です。
例えば図を使った授業では、視覚に制限がある場合、図面の輪郭を立体的にした「触図」を使用します。障がいのない人は図を目で見て即座に全体像を把握できますが、「触図」は指でなぞって把握するため情報を受け取るまでの時間が長くなります。また、指だけで複雑な図形を把握することは難しいため、頭の中にできあがった図の大きさや形などがまったく違う可能性もあります。その結果、障がいのある人が授業のどこで理解につまずいているのか、教師が把握しきれないかもしれません。

情報共有の時差をなくすために

インクルージョン教育支援ツールとして、触図の位置を共有するためのシステムが開発されています。教師と生徒の指先に力覚誘導をする機械をつけ、どちらかの指の動きを共有するシステムです。例えば授業中に生徒が「ここがわからない」と質問した場合、その位置に教師の指が誘導されます。反対に、教師の指の動きを学生の指で再現することも可能です。位置情報を共有していれば、「これ」「ここ」などの指示語だけでも情報が把握できます。

人間の感覚をモデル化

人間は視覚に障がいがあると、目以外の感覚機能を最大限に使って周囲環境を把握します。このときのメカニズムを解明し、コンピュータで人間の感覚をモデル化しようとする研究も進んでいます。例えば、障がいのある人に「どのようなときに周囲に何かがあると感じるのか」などの聞き取り調査をし、それらを定量的に計測可能な機械を使ってデータを集めることでその数学モデルができあがります。このように、人間が視覚以外の方法で空間を把握する仕組みを解明し再現できれば、教育や医療への応用だけでなく、より没入感のあるVR技術開発や、将来視力などが衰えたときの支援ツール開発にもつながるかもしれません。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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筑波技術大学 保健科学部 情報システム学科 教授 大西 淳児 先生

筑波技術大学 保健科学部 情報システム学科 教授 大西 淳児 先生

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メッセージ

自分がすべきことは何か、やりたいことは何か、という問いは、大人にとっても難しいものです。高校生のうちに答えが見つからなくても、心配しなくていいと思います。まずは目の前のこと1つ1つに取り組んでください。時間は過ぎてしまえば二度と帰ってきません。
パフォーマンスを最大限に発揮してさまざまなことに取り組み、1秒1秒をポジティブに生きてほしいです。そうした時間の積み重ねがあなたを成長させ、いつか自分の得意なことや好きなことが見えてくると思います。

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