「共通する必要」をみたすことを通じて財政危機克服を!

「共通する必要」をみたすことを通じて財政危機克服を!

課税への抵抗感が強い日本人

日本の借金は1000兆円を超えました。日本の借金が巨額となった要因の一つは、税収の低さにあります。興味深いことに、実際の税負担は軽いにもかかわらず、感覚として税負担を重いと日本人は感じている、ということが国際比較からわかります。なぜ日本人はこうした抵抗感を抱くのでしょうか。そこには「税金が必要なことに使われているという実感の薄さ」が関係しています。つまり、その抵抗感を和らげるためにも「人々に共通する必要をみたすこと」が求められているのです。

高齢世代と現役世代の世代間対立

ところが、世代間対立がその実現を困難にしています。共働き世帯が中心になり、家族内で女性が介護や育児を無償で行うことはもはや当然のことではありません。そうした状況では、高齢世代は家族以外による介護の充実を求めることでしょう。一方、現役世代は保育の充実を求めることでしょう。つまり、お互いに「共通する必要」を思い描けないでいるわけです。政府が、どちらか一方のサービスだけを充実させようとすれば、その対立は深まるばかりです。「共通する必要」に対する想像力を失えば、税金を納める意味を見出せないのは当然です。結果として、財政危機は一層深まっていくわけです。

財政危機克服のために発想の転換を!

今、求められているのは発想の転換です。例えば、介護は現役世代に関係のないサービスでしょうか。子どものいない現役世代は将来的に介護が必要になるでしょうし、子どもがいる現役世代も介護によって仕事を諦めなくて済むようになります。逆に、保育は高齢世代に関係のないサービスでしょうか。今後、自分たちに必要な社会保障を支えるのは現役世代や将来世代です。そのための投資は、自身を支えるための「連帯」という基盤を築いてくれます。
介護と保育を「共通の必要」としてとらえ、そのための負担を分かち合うと考える、こうした発想の転換が課税への抵抗感の緩和、ひいては財政危機の克服へと結びつく大きな一歩となるはずです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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下関市立大学 経済学部 経済学科 准教授 嶋田 崇治 先生

下関市立大学 経済学部 経済学科 准教授 嶋田 崇治 先生

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財政学、地方財政学

メッセージ

専門は財政学と地方財政論ですが、専門用語も多く、堅苦しい感じがして、正直、はじめは好きになれませんでした。しかし、日本の借金が急増していく様子を目の当たりにする中で次第に高まる「大丈夫なのか」という危機感と「なぜなのか」という直観的な疑問が、僕を財政学の道へと導いてくれました。
温かい先生や仲間とともに積み重ねてきた、直感を根拠づけていく地道な作業が今の研究につながっています。直観的な疑問をもとに問いを立て、それを解き明かす難しさと愉しさをぜひ本学で経験してほしいと思います。

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