社会の動きを映像で表現し分析する「映像社会学」とは
社会はどこにあるか
社会という大きな事象を映像のフレームに記録するには、どこにカメラを置けばよいでしょうか。「社会は個人の中に映っている」という意味で、個人にカメラを向けることも有効です。その人に対するインタビュー撮影やほかの登場人物との会話、その人が撮りためてきた写真・動画や育った街並みの風景からも、一人の人間をかたちづくった社会を見出すことができます。
一方、「社会は個人の外にある」という考え方もあります。例えば、新型コロナウイルスをきっかけとした地球規模の変化のように、一人の人間の力が及ばない事態が起こるのも社会の側面です。そうした社会変動の起こった場所で、人々の生活や復興の様子を撮影し、つなぎあわせることで、個人の外にある社会の全体性が表れてきます。
映像社会学とは
映像が透視する社会をつぶさに分析する学問が映像社会学です。メディア技術が発達し、一般市民にもビデオカメラが普及するにともない、1980年代頃から関心が高まった新しい学問分野です。社会学の伝統的な質的調査方法と同じく、調査協力者と信頼関係を築き、共に映像を作り上げていきます。単に映像を記録するのではなく、場面設定を工夫して登場人物たちが紡ぐ物語を際立たせ、完成した映像を協力者にフィードバックすることで、その人自身も気づかなかった人生の奥深さや生きてきた社会を発見することも、映像社会学の大切な学問的意義といえます。
文字から映像の社会へ
近代社会の基盤は文字というメディアでした。しかし多くの人が映像を視聴し、スマホで撮影することが当たり前になった現代では、映像メディアが社会のベースになりつつあります。例えば、学校や就職の試験が映像を使ったものになれば、これまで見逃されていた能力や個性が再評価されるでしょう。また、一人で読み書きすることに向いている文字に対して、複数の人が協力し合って生産・消費する点も映像の特徴です。映像は今後も、人と人の関係性をより活発にさせながら、社会のあらゆる分野に取り込まれていくでしょう。
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先生情報 / 大学情報
千葉商科大学 総合政策学部 准教授 後藤 一樹 先生
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