身近な食品の価格から、世界の食糧問題を考える

身近な食品の価格から、世界の食糧問題を考える

なぜバターが足りなくなっているのか

2008年頃からバター不足が起こるようになりました。そもそも生乳の総生産量が減少していることが大きな原因です。経営難による酪農離れ、さらに猛暑による乳牛の乳房炎なども生乳不足に拍車をかけています。しかも生乳は、まずは牛乳や生クリームなどに使用され、次によりニーズの高いチーズへと優先的に使われる傾向があり、最後にバター用に回されるのです。

日本の農作物のウリは?

足りない分を輸入すればいいと考えるかもしれませんが、農業を保護する方針のために、農産物の輸入量を簡単には増やせないという事情もあります。農産物の貿易自由化により国際競争が激化すれば、生産効率がよく、人件費が安いアメリカやオーストラリア、カナダといった国には勝てません。ブランド米や和牛を生産する海外の農家も増え、味や品質の面でも差はなくなってきています。
安全性に関しては、可視化が十分ではありませんが、例えば農作物や食肉の安全性を保証するHACCP(食の安全性を確保するために開発された食品の衛生管理の方式)という国際基準に、日本の各農家がきちんと対応すれば輸出における武器となりえるでしょう。

肥沃な土地を奪い合う時代の到来

日本の問題点は、後継者不足により増えた耕作放棄地です。他産業が農業に参入しやすい制度が整えられつつあるものの、工業製品と違い農作物は安定生産が難しく、ビジネスのネックになっています。
また最近では各国とも食糧問題について考えるようになり、中国や韓国などはランドラッシュという形で他国に農作地を求めています。有り余る土地があるように思える中国ですが、人口が多く、所得の増加により食生活が欧米化しています。肉食が増えると家畜のエサのために何倍もの穀物が必要になり、農作地が足りなくなるのです。さらに従来の農作地は疲弊し始めているため、ロシア極東部やアフリカのマダガスカルといった、未使用かつ肥沃な土地の奪い合いまで起きているのです。

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先生情報 / 大学情報

創価大学 経済学部  准教授 近貞 美津子 先生

創価大学 経済学部 准教授 近貞 美津子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

農業経済学、環境経済学、人口学

メッセージ

「経済学」というと文系のイメージがあるかもしれませんが、消費や生産活動を分析するには数学的な工夫も必要になるので、理系の知識が役立つ場面も多いです。もちろん、文系的な素養が生きることもありますが、少なくとも「理系だから経済学に向かない」といったことはないでしょう。特に農業経済学や環境経済学、人口経済学などは、食糧、貧困、人口問題といった多くの国々が直面している深刻な問題と密接に関係しているので、その点からもやりがいと魅力にあふれた分野だといえるでしょう。

先生への質問

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創立以来、学生と教職員が大学を創る者として、互いに対話、研鑽を重ねながら大学の価値を高めてきました。こうした教育・研究および社会貢献の成果は、文部科学省のGP(Good Practice)採択など、外部からの高い評価となり、普遍的な価値として、現代の大学教育に大きな示唆を与えています。また国際化が叫ばれる中、62カ国・地域、225大学との交流協定は、真の国際人養成に大いに貢献できることでしょう。