まちづくりや観光の視点で町工場をみてみる
町工場が集まる東京都大田区
東京都大田区は、中小の工場が集積するものづくりのまちです。完成品を作るのではなく、小さなネジを作るだけ、部品を削るだけ、穴を開けるだけ、メッキをするだけなど、特定の加工を専門に行っているのが特徴です。複数の会社が協力して一つの製品を作ることは、「仲間まわし」とも呼ばれています。その結果、世界的にも優れた製品が生まれています。また、住宅と工場が混在しているのも大田区の特徴です。かつては、住み働く場所であったのですが、近年は工場の跡地に新しいマンションなども増え、地域と工場の関係も希薄になりつつあります。
町工場の一斉公開「オープンファクトリー」
一方近年、製造現場を対象とした産業観光に人気が集まっています。テレビや新聞などでもその活躍が取り上げられ、町工場を見学したいというニーズが高まっています。しかし、大手の自動車工場や食品工場なら、見学した人が最終的に製品を買ってくれることが期待できるのですが、大田区の町工場の場合は、直接商売につながりにくいため、一般の人を対象にした工場見学はこれまで難しかったのです。そこで、大学と地元観光協会が協力して大田区の町工場を、一年で一日だけ地域の住民や一般の人に公開するイベントを行いました。2012年に始まり、現在では毎年秋の恒例のイベントとして定着しています。また、全国の工業都市にも広がっています。
観光・まちづくり・ものづくりの課題に取り組む
大田区では毎年約4000人が区内外から参加していますが、工場やまちにとってもさまざまな効果がありました。これまでやや距離があった地域住民に工場のことを知ってもらう機会となりました。また、企業としては、若手従業員・職人が活躍できる場となっています。さらに、デザインやアートの専門家がものづくりの現場に近づくよいきっかけとなりました。近年工場にとっては、優秀な若者の確保が大きな課題となっていますが、今後は、このような工場を開く取り組みを通じて、いかに雇用に繋げるかが重要になってきます。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 都市環境学部 観光科学科 准教授 岡村 祐 先生
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