講義No.09485 観光学

まちづくりや観光の視点で町工場をみてみる

まちづくりや観光の視点で町工場をみてみる

町工場が集まる東京都大田区

東京都大田区は、中小の工場が集積するものづくりのまちです。完成品を作るのではなく、小さなネジを作るだけ、部品を削るだけ、穴を開けるだけ、メッキをするだけなど、特定の加工を専門に行っているのが特徴です。複数の会社が協力して一つの製品を作ることは、「仲間まわし」とも呼ばれています。その結果、世界的にも優れた製品が生まれています。また、住宅と工場が混在しているのも大田区の特徴です。かつては、住み働く場所であったのですが、近年は工場の跡地に新しいマンションなども増え、地域と工場の関係も希薄になりつつあります。

町工場の一斉公開「オープンファクトリー」

一方近年、製造現場を対象とした産業観光に人気が集まっています。テレビや新聞などでもその活躍が取り上げられ、町工場を見学したいというニーズが高まっています。しかし、大手の自動車工場や食品工場なら、見学した人が最終的に製品を買ってくれることが期待できるのですが、大田区の町工場の場合は、直接商売につながりにくいため、一般の人を対象にした工場見学はこれまで難しかったのです。そこで、大学と地元観光協会が協力して大田区の町工場を、一年で一日だけ地域の住民や一般の人に公開するイベントを行いました。2012年に始まり、現在では毎年秋の恒例のイベントとして定着しています。また、全国の工業都市にも広がっています。

観光・まちづくり・ものづくりの課題に取り組む

大田区では毎年約4000人が区内外から参加していますが、工場やまちにとってもさまざまな効果がありました。これまでやや距離があった地域住民に工場のことを知ってもらう機会となりました。また、企業としては、若手従業員・職人が活躍できる場となっています。さらに、デザインやアートの専門家がものづくりの現場に近づくよいきっかけとなりました。近年工場にとっては、優秀な若者の確保が大きな課題となっていますが、今後は、このような工場を開く取り組みを通じて、いかに雇用に繋げるかが重要になってきます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 都市環境学部 観光科学科 准教授 岡村 祐 先生

東京都立大学 都市環境学部 観光科学科 准教授 岡村 祐 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

都市工学、観光学

メッセージ

もしあなたが観光やまちづくりに興味があるなら、自分の住んでいるまちをよく見てください。まちにはいろいろな歴史があります。どうやって発展してきたのか、あるいは、どんな自然環境の中にあるのかを理解することで、まちづくりのヒントが見えてくるはずです。
また、そこに住んでいる人にも焦点を当ててみましょう。空間的な側面と人の活動の側面、両方から見ていくことが大切です。どんなまちにも必ず魅力は隠れているものです。あなたもまちの魅力を私たちと一緒に探してみませんか。

先生への質問

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東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。