会計は過去の通信簿ではなく、未来への足掛かり
利益しか見ないことの弊害
簡単に言えば、会計とは企業の利益を計算する仕組みです。しかし税理士や会計士に会計を任せ、利益の数字しか気にしない経営者もよく見受けられます。目先の数字に一喜一憂していると、短期志向に陥りがちです。その結果、業績悪化による株価の下落や銀行からの融資引き上げを懸念して利益を引き上げたり、逆に税金によるキャッシュの流出を抑えるために利益を少なくしたりする決算操作が行われることがあります。
企業の価値
企業の価値は長期にわたるキャッシュの獲得能力とリスクで決まります。目先の利益にとらわれず、長期的な視野で価値を高める必要があります。日本企業で最も価値が高いトヨタ自動車は、国内では断トツですが、世界では23位に過ぎず、ほかに50位以内に入る日本企業は、残念ながらありません。世界で最も価値の高い企業は、iPhoneでおなじみのアップル社です。
かつて日本企業の評価は高く「Japan as No.1」と言われ、世界はこぞって日本企業の取り組みを真似たものです。昔の栄光を取り戻すには、現状をしっかり分析し、至らぬ点があれば、それをごまかそうとするのではなく、改善に向けて計画を立て、実行する。そして計画の達成度合をチェックし、また改善するPDCA(Plan-Do-Check-Action)のサイクルを徹底する必要があります。
名経営者に共通すること
PDCAサイクルを回すためには、タイムリーな意思決定に役立つ会計情報が必要です。敏腕と呼ばれる経営者たちは会計を重視しており、例えば京セラの創業者である稲盛和夫氏は、会計的視点からJAL(日本航空)の再建に取り組みました。「経営の神様」と呼ばれるピーター・ドラッカー氏の著作を読むと、会計にも精通していることがわかります。ダイエーの礎を築いた中内功氏のように、第一線を退いた後に改めて会計を学び直す人もいます。過去の業績を数字化するだけでなく、いかに未来の経営にフィードバックさせるか、それこそが経営者に必要な資質だと言えるでしょう。
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