これからの農業はビジネスモデルの時代へ
「新しい作物」で
近年、農家の高齢化などを原因とした耕作放棄地が増えています。この問題を解決するのに、「薬用植物」や「高付加価値作物」を生産できるようにする、という方法があります。
例えば、オタネニンジン(朝鮮人参)やカンゾウ(甘草)、マオウといった漢方の原料となる薬用植物栽培、近年スーパーフードとして話題のキヌアなど、本来は国内栽培されなかったものを日本の気候風土で安全・高品質に安定生産できれば、農業にとって大きな光となるでしょう。
栽培学は現場ありきの研究
ただし、栽培の研究には広い土地が必要です。加えて、米なら結果が出るまで1年かかるように、新たな作物は試行錯誤に時間がかかります。まずは研究者が実験し、種をいつまくか、肥料はいつ、収穫はいつ、などといった「栽培履歴」を作れば、農家はそれを参考に新たな作物を栽培できるようになります。ところが農家が実際に栽培してみると、実験のようにうまくは育たない事態がしばしば起こります。
現場と研究の融合で社会に貢献
栽培学研究のカギとなるのは、栽培経験に基づく発想と、農家の現場からのフィードバックです。そこで、栽培を継続してもらえるよう、事前に買い手と売り手の関係を開拓しておくことが必要です。その場合、買い手に購入してもらえる品質や量といった条件も把握しなければなりません。つまり、研究を始める以前から、どのようなものを、どの場所で、どのくらいの規模で栽培し、その生産量はどのくらいなのかなど全体のビジネスモデルを構築することが大切なのです。
例えば、企業と連携して作物栽培の方法を開発し、それを農家サイドで実証栽培し、その収穫物を加工し、県外の食品卸に売って収益を還元するといった仕組み、気温、照射する光の質やサイクル、肥料の組成や濃度、栽植密度などを明確化した植物工場での栽培方法、大面積で栽培するときの機械による合理化などを研究しながら、さらに収益構造といった側面から、有益な方法を日々探究するのも、栽培学にとって重要な課題なのです。
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先生情報 / 大学情報
鳥取大学 農学部 生命環境農学科 国際乾燥地農学コース 教授 西原 英治 先生
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