ものづくりにも貢献する超音波センシング技術

ものづくりにも貢献する超音波センシング技術

超音波検査は「山びこ」と同じ

登山のとき、「ヤッホー」と叫ぶと周囲の山に声が反射して「ヤッホー」と戻ってきます。その際の音量や角度、戻ってくるまでの時間を綿密に測定・計算すると、周囲の山の形状や位置を割り出すことができます。妊婦さんのおなかにいる赤ちゃんの状態を調べる超音波検査の原理はこれと同じです。
音は高くなるほど同じ方向に真っすぐ進む習性があるため、超音波を使うことでより正確なデータを拾うことができます。加えて人体への安全性が高く、対象物を壊さずに中の状態が調べられるという利点があるため、大型車両や航空機、橋など大きな構造物の内部亀裂を見つけるのにも超音波が使われています。

夏と冬では音の聞こえ方が違う!?

また花火の「音」に注目すると、夏と冬では音が聞こえるまでの時間が違います。空気の温度が変わると音が伝わる速さなども変わるからで、この温度と音の相関関係を利用すれば、物の温度変化を追うこともできます。空気以外にも、素材のどこまで熱が通っているかをリアルタイムで調べられるので、加熱中の素材の状態を調べるといったこともできます。ただし、あらかじめ何の温度を測るのかを設定する必要があるため、「○○専用」のように特化させる必要があります。

超音波で温度が測れるメリットとは

測る対象物が決まっていて、それに対しての準備とある程度のコストが必要という点を踏まえると、産業界での利用が現実的でしょう。音は空気中よりも液体や固体の方がよく伝わるため、プラスチックや金属を溶かして固めるときの温度、固まり具合の計測にも向いています。
何を生産するにも温度管理は重要です。材料の温度変化を追うことができれば、その情報を生産プロセスにフィードバックし、効率よく質のよい製品をつくれるようになります。これがよく言われる「IoT(モノのインターネット)を使ったものづくり」の根幹であり、コンピュータで生産を管理するにはセンシング技術が大きな役割を担うのです。

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先生情報 / 大学情報

長岡技術科学大学 工学部/工学研究科 機械工学分野 教授 井原 郁夫 先生

長岡技術科学大学 工学部/工学研究科 機械工学分野 教授 井原 郁夫 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

計測工学、機械工学、連続体力学

先生が目指すSDGs

メッセージ

1912年に起こったタイタニック号沈没を機に発展した超音波によるセンシングは、現在では幅広く活用されています。精度も格段に上がり、今や妊婦さんのおなかの中にいる赤ちゃんの表情さえわかるようになっています。
機器の扱いや測定結果を読み解くことへの慣れが必要なのが超音波検査のマイナス面でしたが、人工知能(AI)を使うことで誰でもエキスパート並みに超音波を使いこなせないかと考えられています。音波研究の歴史は長いですが、超音波はまだ大きな可能性を秘めています。あなたも興味があればぜひ学んでください。

先生への質問

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長岡技術科学大学に関心を持ったあなたは

長岡技術科学大学は、大学院に重点を置き、実践的な技術の開発を主眼とした教育研究を行う工学系の大学として、新構想のもとに設置され、実践的・創造的な能力を備えた国際的に通用する指導的技術者・研究者の養成を行い、これらを通じて社会との連携を図ることを基本理念としています。
大学はまた、勉学の場であると同時に人間形成の場でもあります。美しい豊かな自然に恵まれた環境と、国内はもとより世界の各地から集う学生たちが豊かな人間性を養い、創造性とチャレンジ精神を求め、友情を育む潤いのある大学生活の場があります。