風景をデザインする「ランドスケープ・アーキテクチュア」とは?
「ランドスケープ」とは?
「ランドスケープ」という言葉を知っていますか? ランドスケープとは、直訳すると風景や景観を意味する言葉です。学問体系としては「ランドスケープ・アーキテクチュア」という分野があり、「まちづくり」を道路や住宅といった人工構造物だけでなく、緑地や公園といったオープンスペース、さらにはそこでの人々の過ごし方まで含めて考えます。
1850年代のニューヨーク・セントラルパークの設計において総合的な環境づくりの技術体系が確立したことが始まりとされています。建築や都市環境のデザイン的な側面に加え、みどりや自然を取り扱うことから、農学的な要素も多分に含んでいる点が特徴です。
日本におけるランドスケープの歩み
日本にランドスケープ・アーキテクチュアが入ってきたのは明治時代の末から大正時代です。それまで、都心部に計画的なオープンスペースがつくられることはほとんどありませんでしたが、文明開化の影響を受けて公園がつくられるようになります。その第一号は東京の日比谷公園で、人々がスポーツやレクリエーションを気軽に楽しめる近代的な都市公園のモデルにもなっています。その後もたくさんの公園がつくられ、都市生活において欠かせない存在となりました。現在では再整備や利用の仕組みづくりまでを含めて、公園を「つくる」という意味がますます広がっています。
ランドスケープ・ファースト
しかし、日本ではランドスケープを意識したまちづくりや都市整備はまだまだ遅れています。日本の建設現場では、緑地やオープンスペースは「外構」と呼ばれ、中心となる建物の周囲を飾るものととらえられることがほとんどです。しかし、世界的に見ると「ランドスケープ・ファースト」という考えが浸透しており、まずは風景や景観の下地となる緑地を計画して、次にそこに見合った建物がつくられます。人口減少時代を迎え、空き地や空き家が増加している日本では、オープンスペースをまちづくりに生かしていくランドスケープの重要性がこれまで以上に高まっていくでしょう。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 農学部 緑地環境科学科 准教授 武田 重昭 先生
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