環境が生活習慣病の原因? 環境衛生学で読み解く環境と健康の関係
環境と健康の切り離せない関係
日本や先進国では、脂肪肝や糖尿病などの「生活習慣病」が増加し、大きな問題になっています。これらの病気は普段の食生活の乱れや運動不足が原因とされることが一般的ですが、はたしてそれだけが悪いのでしょうか?
事実、脂肪分が多い食べ物を与えたマウスより、同じ食べ物に普段よく使われている化学物質を含んだ物を与えたマウスの方が、脂肪肝が悪化しやすいという研究結果もあるのです。このように、健康や生活習慣病をはじめとする最近急速に増えてきた病気「現代病」の問題を、医学と環境の両面から研究する学問が「環境衛生学」です。
毒性がなければ安全?
環境衛生学は、身の回りでたくさん使われている化学物質を、環境汚染物質として研究対象としています。これらの多くは、かつての公害問題を引き起こした物質のような毒性はないことが証明されています。しかし、だからといって、何の健康被害も引き起こさないということにはなりません。実際、大量に摂取すると肝臓に悪影響を及ぼすことがある化学物質をマウスにほんの微量を投与したところ、アトピー性皮膚炎の悪化が見られ、逆にそれより多めの量では悪化が認められなかったという実験結果もあるのです。つまり、あるデータでは毒性がないとされても、チェックする影響や量が異なると、必ずしも安全とは言い切れないのです。
アレルギーも環境要因から解明する
このように、化学物質がさまざまな健康被害を引き起こす可能性がある点に着目しなければなりません。アレルギー症状は、スギなどの花粉や、米や小麦といった食べ物など、昔からあるものでさえその原因となっていますが、そのメカニズムを解明するためには、花粉や食べ物以外の環境要因にも着目する必要があります。アレルギーの基となる免疫系を環境汚染物質がかく乱し、アレルギー症状が増えている可能性もあるのです。
現代人を悩ませるさまざまな症状を解決していく上で、医学と環境の両方の観点から問題にアプローチする環境衛生学の役割はますます大きくなるといえます。
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京都大学 工学部 地球工学科 環境工学コース 教授 高野 裕久 先生
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