世界的に広がる「土壌劣化」とは? 地球環境を守る土の研究

世界的に広がる「土壌劣化」とは? 地球環境を守る土の研究

土の研究は多様!

土壌学は、土を理解し、土の健康を守る方法を考える分野です。1㎡の土壌には数万を超える生物が暮らしており、生態系を支えるとても大切な空間です。植物を育て、水資源を蓄えるといった能力ももっています。
土壌学の研究は幅広く、化学・生物・物理・地学のすべてにまたがっており、例えば土の中の化学成分、微生物の働き、土の硬さや通気性・水はけなどの物理的性質、岩石や鉱物など、多様なテーマがあります。土の性質は地域によって違うため、各地でフィールドワークが行われているのも土壌学の特徴です。

土の力が落ちて食料危機が深刻に

「土壌の劣化」が世界的に広がっています。土壌の劣化とは、温暖化や自然破壊、不適切な農業活動などの影響で「土の力」が落ち、生物多様性が失われることです。国連食糧農業機関(FAO)は、世界の土壌の約33%がすでに劣化しており、このままでは食料危機が深刻化するとしています。
劣化を防ぐためには、「土の健康状態」を知ることがとても大切です。その一つとして、フッ素による畑の汚染の状況の調査・研究が進められています。フッ素は汚染物質の一つで、田畑のフッ素の濃度が高まると作物が育ちにくくなります。この研究では、カルシウム化合物を土に混ぜて、フッ素とカルシウムを化学反応させることによって、土の健康を取り戻そうとする試みも行われています。
土の健康を回復する技術の開発は大切な研究テーマの一つです。微生物の働きを利用して有害物質を分解・除去する「バイオレメディエーション」、植物により有害物質を吸収する「ファイトレメディエーション」などの方法もあります。

SDGsに直結する土の健康

陸の豊かさを守ることはSDGsの一つです。また、飢餓や安全な水・トイレ、気候変動、海洋汚染の問題とも、土は大きく関わっています。土の健康なくして、私たち生き物の健康も、自然環境・生態系の健康もありません。土地の豊かさは地球環境の豊かさに直結しているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

鹿児島大学 農学部 農学科 准教授 赤木 功 先生

鹿児島大学農学部 農学科 准教授赤木 功 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

土壌学、植物栄養・肥料学

メッセージ

小動物・微生物の宝庫で、環境によりさまざまな性質を持つ「土」は、とても興味深い研究対象です。土は、実は常に変化していて、例えば田んぼに水をはっただけでも劇的に成分の化学形態が変わります。フィールドワークはとても面白く、私は奄美大島や徳之島の赤い色の土がどのように進化してきたのかを調べています。植物の栄養や肥料など農業に関わることはもちろん、環境保護や地球環境の成り立ちなどについても学べることがたくさんあります。土について一緒に学び合えることを楽しみしています。

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鹿児島大学は、日本列島の南に位置し、アジアの諸地域に開かれ、海と火山と島々からなる豊かな自然環境に恵まれた地にあります。この地は、我が国の変革と近代化を推進する過程で、多くの困難に果敢に挑戦する人材を育成してきました。このような地理的特性と教育的伝統を踏まえ、鹿児島大学は、学問の自由と多様性を堅持しつつ、自主自律と進取の精神を尊重し、地域とともに社会の発展に貢献する総合大学をめざします。