持続可能な社会を未来につなぐ、これからの「社会科教育」とは?
「暗記科目」と誤解されがちな社会科
社会科は小学校から中学・高校と進むにつれ歴史、地理、公民などに分かれ、ほとんどが暗記科目のようにとらえられていますが、本来の社会科教育の目的は、知識量を増やすことではありません。地球規模で広く社会を見渡す視野をもち、時代とともに変化する社会環境や新たに発生する社会的課題に対応できる「社会的な見方・考え方」を育成するための教科です。
ESDを基盤に
近年の学習指導要領では、「持続可能な開発のための教育(ESD)」を基盤とする理念が明確に位置づけられています。ESDの目標は、環境、エネルギー、防災、世界遺産や地域の文化財、生物や気候変動など、関連する多様な分野を「持続性」の観点からとらえ直し、より良い社会を次の世代につなげるための資質や能力、そして持続可能な社会づくりに参画しようとする価値観や態度を育てることです。
例えば、ユネスコの世界文化遺産を永く未来へつないでいくにはどうしたらいいでしょうか。単に対象の歴史的価値を知るだけでなく、文化遺産が長い間維持されてきた社会的背景や地域との関係性、交通・観光などの要素にも目を向け、「持続性」の観点から考えることが必要です。
モンサンミッセルにみる文化遺産の「持続性」
島全体が修道院であるフランスのモンサンミッセルは、潮の満ち引きで島へ渡る道筋が現れる世界文化遺産です。中世から巡礼地として多くの人々を集め、19世紀には堤防道路が造られて陸続きになりました。しかし、それが原因で地形の変化から景観が失われましたが、現在、再び海に浮かぶ景観を取り戻しています。また、19世紀から続く宿泊施設や名物オムレツなどのサービスが大きな観光資源でもあります。
これらの例のように、「文化遺産を持続する」というのは、景観・交通・サービスといった多面的な視点から、時代に応じた形で維持していくことです。既成概念に縛られず、地球上の価値あるさまざまな遺産を将来の世代につなげていく視点の育成が、これからの社会科教育の重要なキーワードです。
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先生情報 / 大学情報
京都女子大学 発達教育学部 教育学科 教授 松岡 靖 先生
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