ウイルスは生態系の一員として欠かせない存在だった!?
海の中にもウイルスがいっぱい!
ウイルスというと、まず連想するのは「病気を起こす『悪い』ウイルス」でしょう。でも、地球上には、そうでない『良いウイルス』たちもたくさんいます。
例えば海に目を向けてみましょう。スプーン1杯の海水、その中には、数千万個を超える膨大な数のウイルス粒子が浮遊しています。それらの一部は、プランクトン細胞に吸着・侵入し、自身の設計図(DNAまたはRNA)を使って細胞を支配、やがて細胞内で大量の子孫ウイルスを増殖させます。
ウイルスが生きものではない理由
DNAやRNAを持つ、増殖もする、でもウイルスは生物ではありません。普通の生物は、栄養を取り込み、分裂により増殖します。一方、ウイルスの場合、感染可能な相手(宿主)がいない限り、増殖することはできません。ウイルス表面の「鍵」分子と宿主表面の「鍵穴」分子が合ったときにだけ、ウイルスは自身の設計図を細胞内に侵入させ、細胞をウイルス量産工場へと変化させるのです。
良いウイルスとの共存が生命を豊かにしてきた
ウイルスは宿主を殺す、宿主はウイルスを増やす、もしそれだけの関係だったら、宿主は死に絶え、ウイルス複製の場はなくなってしまうはずです。でも実際は違います。ウイルスと宿主が平和的に共存している例はごく普通にあちこちでみられます。実際には、地球上の多種多様なウイルスの中で、「悪いウイルス」の占める割合は微々たるものに過ぎません。ほとんどのウイルスは、生態系の構成メンバーとしてその維持に関与し、人類に恩恵をもたらしてくれているのです。
例えば、浅海域のプランクトンがウイルス感染で死滅しても、その死骸から放出される栄養分は新たな植物プランクトンの増殖に直ちに役立ちます。つまりウイルスは、貴重な栄養分を死細胞の形で深海底に沈ませることなく、浅海域生態系での食物連鎖サイクルにフィードバックしてくれているのです。こうしたウイルスの働きがなければ、食卓に豊かな海の幸が並ぶことはないでしょう。ウイルスにも大切な役割があるということです。
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