質が良ければ短時間でもOK? 子どもと睡眠・生活リズムの関係

質が良ければ短時間でもOK? 子どもと睡眠・生活リズムの関係

子どもと睡眠

人間は、大脳を休ませるために睡眠を必要とします。巷では「睡眠の質が高ければ睡眠時間は短くても良い」といった言説もみられますが、これには学問的な信ぴょう性は低く、人には一定の睡眠時間が必要です。特に子どもの睡眠時間は精神衛生や健康感、知的好奇心、成績などさまざまな面で発達に影響します。睡眠時間が不足すると他人に対する警戒心が高まり、いじめや仲間外れといった対人関係のトラブルの原因になることもわかっています。子ども学や時間生物学といった学問分野で、こうした子どもの睡眠や生活リズムについて研究しています。

教育機関との連携

子どもを対象とする研究は、倫理をはじめさまざまな制限がかかりますが、研究機関だけでなく教育現場と連携することによって、より有用な成果を得ることができます。例えばこれまでの研究では、保育園や幼稚園と協力し、幼児や保護者に対して朝ご飯と夕ご飯の時間や内容などの食生活を含め、生活に関するさまざまなアンケート・聞き取り調査を定期的に行っています。また「早寝早起き朝ご飯」の必要性を子どもにわかりやすく伝える絵本や、保護者向けのリーフレットを作成して啓蒙・情報発信を継続的に行い、その結果が夜型生活の抑制につながることも確認しています。

家庭だけでは解決できない

子どもの睡眠不足は、ゲームやスマートフォンが原因とされることがありますが、特に幼児では養育者の帰宅、あるいはその後の夕食時間の遅れの方がより深く影響することも研究からわかっています。しかし家庭や働き方の多様化、所得格差の拡大、あるいは育児の負担が母親に集中し、母親自身の睡眠時間も極端に短くなっている現状では、家庭の努力だけで理想的な睡眠時間や生活リズムを保つことは困難です。地域の教育機関や行政と連携しながら、子どもと睡眠、生活リズムの関係性を明らかにし、その成果を教育や啓発に生かすこの研究は、社会全体の意識を変えるという点でも、非常に大きな役割を担っているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

高知大学 教育学部 人文社会科学系 講師 竹内 日登美 先生

高知大学 教育学部 人文社会科学系 講師 竹内 日登美 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

子ども学、時間生物学、理科教育学

先生が目指すSDGs

メッセージ

ヒトがヒトらしく生きるために大切な睡眠ですが、科学的根拠のない都市伝説を信じている人も少なくありません。怪しい情報に惑わされず、良好な睡眠習慣を身につけて維持するには、正しい知識と科学的理解が不可欠ですが、一朝一夕には身につきません。そこで必要になるのが「教育の力」です。教育の力で社会や人々の認識を変えるという方法は、一見遠回りに見えますが、最も着実な方法でもあります。あなたも、社会と健康を変える教育に取り組んでみませんか?

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

高知大学に関心を持ったあなたは

高知大学は、四国山地から南海トラフに至るまでの地球環境を眼下に収め「地域から世界へ、世界から地域へ」を標語に、現場主義の精神に立脚し、地域との協働を基盤とした、人と環境が調和のとれた安全・安心で持続可能な社会の構築を志向する総合大学として教育研究活動を展開しています。
教養教育、専門教育、正課外教育やインターンシップを通じ「表現力」「プレゼンテーション能力」「コミュニケーション能力」「異文化理解能力」「情報活用能力」の5つの能力で社会の力になる21世紀の知識創造社会で活躍できる人材を輩出します。