宇宙で起きる燃焼現象を「相似則」で解明せよ!
崩壊シーンをリアルに見せる特撮が使う方法とは
特撮映画を見たことがあるでしょうか。例えば、ゴジラが模型のビルを壊すシーンは、とてもリアルに見えます。実際は目にしたことがないはずなのに、なぜ「それらしく」見えるのでしょうか。実は、崩壊現象をつかさどる物理過程が等しくなるように調整しているからです。この調整する際のルールを「相似則」といいます。ゴジラの場合、スケール比が1/25の模型で再現し、建物の崩壊シーンは約5倍のスピードで撮影します。模型が壊れる1倍速で再生すると、ビルがゆっくりと壊れるさまが再現され、スケール感あふれるリアルな映像になります。
相似則で物理現象を再現する
ゴジラの例は崩壊を再現しましたが、この手法は崩壊に限らず、多方面の開発研究現場で活用されています。例えば製鉄所の溶鉱炉や原子力発電所、巨大な建造物、大規模火災など、現物での実験が難しい場合に有効です。どうしたらより的確に再現できる相似則を得るのかは容易ではありません。まずは支配要素を予測して相似則の候補を導き、異なる模型を用いてその妥当性を確認します。もし相似則が存在すれば、危険をともなわずに、行くことのできない環境での現象でも低コストで模型を使って再現ができるので、未知の領域の研究開発に役立ちます。
相似則で宇宙での安全を確保する
さて、人類が宇宙をめざすなら、安全性を得るために火災防止は不可欠です。でも、宇宙ステーションで火災の実験をすることはとても大変で、どう燃えるかを調べるのもままなりません。相似則を検討した結果、無重力で観察される丸い炎は、圧力を下げた箱の中で再現できることがわかりました。この実験により、無重力を使わずとも、宇宙空間では地球よりも燃えやすいことがわかりました。月や火星のような低重力場の火災現象の解明にも相似則の活用が期待されています。
人類が宇宙空間で暮らせるようになるには、あらゆる実験・検証が必要です。相似則を用いれば、その検証がスピーディーになり、人類の夢に近づけるのです。
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豊橋技術科学大学 工学部 機械工学系 教授 中村 祐二 先生
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