超小型人工衛星「Nano-JASMINE」

超小型人工衛星「Nano-JASMINE」

14基の超小型衛星は、世界最多

宇宙には人類が打ち上げた人工衛星が数多く飛んでいます。その中には、「超小型」と呼ばれるサイズの衛星もあります。小型衛星が100~500kg(30億~50億円)なのに対し、超小型衛星は50kg未満(5000万~2億円)の予算で飛ばすことができます。
日本では大学の研究室などで、2000年ごろから本格的に超小型衛星の研究・開発が進められ、今までに14基の超小型衛星が打ち上げられています。この数は、一国が打ち上げた超小型衛星としては世界一です。衛星の性能も高水準で、日本はこの分野で、世界をリードしているといっても過言ではありません。

1.4トンの衛星を、30kgにまで小型化

例えば、2013年に打ち上げが予定されている「Nano-JASMINE」という超小型衛星があります。これは本格的な宇宙観測衛星で、1989年にヨーロッパで打ち上げられたヒッパルコス衛星と同等の機能を搭載しています。ヒッパルコス衛星は1.4トンもの重量がある大型衛星だったのですが、「Nano-JASMINE」はわずか30kgの超小型衛星。開発費用もヒッパルコス衛星の数十分の1で出来上がっています。
このような衛星の超小型化は、マイクロエレクトロニクスの目覚ましい進歩が可能にしたのですが、日本人の気質やセンスも大きく貢献しているということができます。日本人は、サイズが決まったものの中に機能的・視覚的に効率よく詰め込む作業を得意としています。ちょうど、お弁当をきれいに詰める文化と通ずる気質といえるでしょう。また、制約がある中でまじめに辛抱強く取り組むことも、日本人的な美徳の表れということができます。

実用可能な段階にある超小型衛星

「Nano-JASMINE」は1辺が50cmほどの立方体の衛星ですが、これが観測する宇宙のデータは、宇宙の構造の解明に大きな貢献をすることが期待されています。日本の超小型衛星は十分に実用が可能な段階にあり、今後ますます、活躍の場が広がっていくことでしょう。

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東京大学 工学部 航空宇宙工学科 教授 中須賀 真一 先生

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航空宇宙工学

メッセージ

高校時代には、自分で何か問題をみつけ、それに取り組んで解くという「問題解決」の体験がとても大切だと思います。例えば文化祭で、自ら「これ、やってみたい」ということをみつけ、実現のためにチームを組んでいくなどという経験です。もちろん、文化祭だけでなく、何かの研究や調査でもいいのです。何かに打ち込むことは、ほかの何かを捨てることでもあります。そうやって達成する楽しさや喜びを知っていることが、大学や社会に出てからの活力になると思います。

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