美術作品の評価は時代によってどう変わってきたか?
パトロンが依頼していた18世紀までの絵画
絵画はどのように評価されるのでしょうか。モナリザを描いたレオナルド・ダ・ヴィンチが生きていた15~16世紀は、財力のあるパトロンが絵を依頼して、画家は報酬を得ていました。今と違って、絵のテーマも、大きさも、どこに描くかも、画材もある程度決められていて、画家の自由度は高くありませんでした。画家は社会の中の一職業だったのです。18世紀くらいまでの絵の評価には、規範がありました。大きな画面に高価な画材を使って、キリスト教やギリシア神話の重要な場面を描くのが「名画」の条件だったのです。
モナリザはなぜ注目されるのか
ところが、19世紀になると、誰からも依頼されなくても、自発的に絵を描く画家が登場します。芸術が自己表現活動になり、画家たちは、よりよい絵、誰も描いたことがないような絵をめざして格闘するようになりました。マーケットの中で絵が売買されるようになります。評価の規範が崩れていき、一人ひとりめざす芸術が違うこともあり、評価が難しくなりました。モナリザが評価されたのは、このような19世紀以降の芸術観によるものです。モナリザは自発的に描かれた絵です。技法的にも内容的にも注目すべき点がありますが、実はモナリザを有名にしたのは20世紀前半に起きた盗難事件でした。かつてフランス王室が保管し、その後ルーヴル美術館が所蔵していた天才レオナルド・ダ・ヴィンチの絵が盗まれたという事実が評価を高めたのです。
忘れ去られた画家を掘り起こす
19世紀以降の絵画の評価には、このような偶然の要素があります。美術史的には「印象派」などのムーブメントがありました。戦後のアートはニューヨークが中心です。本流の中心にいる画家は注目を浴び評価されますが、その枠組みから外れた画家、あるいは傍流は評価されず、忘れ去られるような場合もあります。
しかし、今はこのような美術史に対する見直しが行われています。注目されていなかった国や地域の画家、忘れ去られた芸術家の掘り起こしが行われているのです。
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先生情報 / 大学情報
鳥取大学 地域学部 地域学科 国際地域文化コース 准教授 筒井 宏樹 先生
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