「推し活」という消費の現場から、ファンの文化が見えてくる

「推し活」という消費の現場から、ファンの文化が見えてくる

「物が欲しいから買う」のはあたり前?

社会で「お金を使う」という行為は、「物が欲しい、サービスを使いたい」ということに限りません。ほかの人に何らかのメッセージを伝えるタイプの消費、例えば「マウントをとる」ためにお金を使うこともあります。聖徳太子の時代には冠の色で地位を表すなど、昔から物によって地位身分を示すことがありました。それが近代社会ではお金を使って行われるようになったのです。

ひっそりと推し活する人は少ない

例えば、「推し活」はマーケティングに付随して生まれた現象で、基本的にはマーケットを通して「推す」仕組みになっています。そこでは使った金額で「推し」にいかに愛情をもっているかを表現し、SNSなどを通してファンのコミュニティの中でアピールするという現象が起こります。しかし、かけた金額で地位が上がるわけではありません。例えばコンサートの前列席を高額で買い続けるのは主に「自分のため」であり、一方グッズを多く買うことは人気の証になる売上の貢献につながる、など「評価されるお金の使い方」が存在することがわかっています。消費をテーマにした研究では、ファンの人たちにしかわからない価値や、何が欲しくてつながっているのかなど、インタビューを通してその特殊な文化やコミュニケーションを分析していきます。

価値観が混じり合う消費の現場

近代化が進むと、基本的には「みんなが同じ世界に生きている」という想定で社会が一元化、均質化し、お金という尺度で一律に価値を測ろうとする傾向が強くなっています。しかし消費の現場を見ると、人によって用いるお金の意味や財の評価は全く違っており、それぞれが異なる世界を見ていることがわかります。例えば音楽フェスも、消費の現場と見れば同じ価値観の人の集まりではありません。それでも成立しているのは、何かしらのメカニズムがあるはずです。社会学では消費活動の中に、経済的な価値を超えるさまざまな意味を見いだすことができるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

神戸女学院大学 文学部 総合文化学科 講師 藤岡 達磨 先生

神戸女学院大学文学部 総合文化学科 講師藤岡 達磨 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

社会学、消費社会論、物質文化論

先生が目指すSDGs

メッセージ

学生生活の中で、「自分の理想から外れたことが許せない」とか「正解は一つしかない」と思うことがあるかもしれません。でも正しいものが人それぞれにあっていいし、理想もどんどん変わっていく方がおもしろいと思います。私自身、周りから遅れて大学院に入ったり、思い描いていたような研究者にはなっていなかったりしますが、それも人生の味だと思って日々を積み重ねています。社会学を学ぶことで、世の中にはさまざまなものの見方があること、多様性などを理解する訓練にもなるかもしれません。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

神戸女学院大学に関心を持ったあなたは

創立150年を迎える神戸女学院大学。徹底した少人数教育で、授業の7割が20人以下で行われ、学生と教員の距離が近く双方向で質問のしやすい環境が特長です。また、リベラルアーツのカリキュラムで実技を含む他学科の専門分野の科目を多く履修することができ、自由な学びが展開できます。「就職に強い!神戸女学院」として、人気の航空業界をはじめ、マスコミ、製造、各業界に多くの卒業生を輩出しています。2024年には国際学部と心理学部が開設され、2025年には生命環境学部※が新しくSTART!(※2025年4月開設)