動くことができない植物は、なぜ同じ場所で生きていけるのか?
植物の不思議な生命力
植物は、自分で動くことができない点が動物との大きな違いです。動物は温度の変化や日が沈む、昇るといった環境の変化に対して、自分から環境の良いところに動いて対応します。一方、植物は常に同じ場所にいて、自身の中で環境変化に対応しなければなりません。そのため、悪い環境の中でも生きていける「環境応答」という仕組みを備えているのです。
この現象には進化論で有名なチャールズ・ダーウィンも興味を持ち、100年以上も前に植物の向日性を発見しています。ただし、そのメカニズムの概要がわかってきたのは最近のことで、今はようやく分子レベルで説明できるようになってきた段階です。
葉っぱの穴に秘密がある?
植物の「環境応答」を調べるには、気孔孔辺細胞というものを用います。気孔とは葉の表面に存在する小さな穴のことで、2つの細胞が唇型に向かい合っている点が特徴です。植物は光合成をして、光エネルギーを化学エネルギーへと変換させることでエネルギーを得ており、その時に使う二酸化炭素を取り込むための口が気孔です。気孔の細胞を見ると、葉の表面は穴だらけということがわかります。それを開けっ放しにしていると、二酸化炭素は取り込めても、同時に水分がどんどん蒸発してしまい、葉はしおれてしまいます。ですから必要がない時は気孔を閉じておき、光が十分に当たって光合成をしている時に開くのです。顕微鏡で見ると、細胞が動く様子がよくわかります。
植物をもっと元気に、長生きさせたい!
こうした研究から気孔が大きく開く植物を作れば、よりたくさんの二酸化炭素を取り込むことができ、成長が早くなると考えられています。あるいは乾燥時にはきっちりと口を閉じる植物を作れば、厳しい環境でも育つ植物を採取できると期待されています。
逆にビニールハウスのように温度も一定で、水もある程度確保され、環境ストレスがかからない状態の中で、より生育を促進させるためにはどうすればいいかといった研究も進んでいます。
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先生情報 / 大学情報
名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所・理学部 生命理学科 教授 木下 俊則 先生
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