講義No.15218 看護学

手術中もリスク大! 手術室看護師が褥瘡予防のためにできること

手術中もリスク大! 手術室看護師が褥瘡予防のためにできること

手術中も発症する褥瘡

医療現場などでよく見られる症状の一つに、「褥瘡(じょくそう)」があります。これは、長時間同じ姿勢で寝たきりになることで、皮膚の一部が赤くなったり、ただれたりすることです。褥瘡を予防するのも看護師の仕事です。療養中に起こる問題と思われがちですが、実は手術中に起きることが多々あります。
手術中の患者は意識がなく、一定時間同じ姿勢になるため、圧迫される箇所が生じます。褥瘡が起きやすいのは、脊椎や骨盤といった骨が出ている部分です。6時間以上の手術で起きやすく、患者の体形などによっては3〜4時間の手術で起きるケースもあります。

看護理工学で予防法を検証

手術中の褥瘡を予防するには、手術中の体位、患者の体形、マットレスの素材や体圧分散率などを対象に、看護理工学の手法を用いて、MRIやエコーといった機器を用いて効果的な方法を調べます。病棟ではエアマットレスが褥瘡予防に有効とされますが、手術室は体位を安定させるため、ウレタンマットレスを使用します。反発の高低やウレタン内部などを検証し、最もよい構造を導き出します。一般に推奨されている手術中のマットレスがありますが、それより硬めのほうが皮膚のずれが少なく、予防に効果的なことがわかりました。
手術は、患者がうつぶせになるケースもあります。うつぶせは呼吸が苦しくなるため、胸部と腹部の4点で支えるマットレスを使うと、呼吸改善と褥瘡予防が期待できます。

最新技術にも対応

また、手術台を傾ける手術の場合、皮膚がずれて傷つくことがあります。術前にその部分をテーピングして、皮膚が傷つかないよう保護します。開腹手術、腹腔鏡(ふくくうきょう)手術、ロボットによる手術など、医療は進化していますから、それぞれに対応した方法を検証することも必要です。
手術室看護師は患者に適した環境を整えて、術中の全身を管理します。褥瘡を発症すると、患者の苦労が一つ増えてしまいます。手術以外の傷を与えない、手術時のリスクを考えることも看護なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

福井県立大学 看護福祉学部 看護学科 准教授 熊谷 あゆ美 先生

福井県立大学看護福祉学部 看護学科 准教授熊谷 あゆ美 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

成人看護学

メッセージ

看護に興味があるなら、どんな種類の看護師がいるのか調べてみましょう。手術室看護師はその中の一つで、ドラマでよく見るメスや手術器具を外科医に渡す器械出し看護師と、麻酔科医の介助や患者さんの管理など手術室全体のサポートをする外回り看護師がいます。手術室看護師は、外科医や麻酔科医とチームを組んで手術に臨む、やりがいのある仕事です。術中は意識がない患者さんですが、翌日に「ありがとう」と言ってもらえたりします。手術室看護師に興味があれば、ぜひ一緒に手術でできることを考えましょう。

福井県立大学に関心を持ったあなたは

福井県立大学は、経済学部、生物資源学部、海洋生物資源学部、看護福祉学部、恐竜学部の5学部9学科からなる公立の総合大学です。
福井県は、歴史や自然の豊かさ、優れた生産技術や高い生活文化の質を誇る非常に優れた「学びと体験のフィールド」です。
本学では、各学部の専門に合わせた充実した施設・設備と恵まれた自然環境の中、少人数教育を柱に、専門能力の養成はもちろん、教養・語学・情報教育を重視し、これからの情報化社会・グローバル社会に適応できる人材の育成に向けた多彩な教育プログラムを展開しています。