現代の民事裁判は2000年前のローマ法に原型ができていた?
日本の民事訴訟のモデル
個人や法人など、民間で起こるさまざまなトラブルを裁く日本の民事訴訟法は、紀元前1世紀から紀元1世紀頃の間に確立されたローマの民事訴訟法がモデルになっています。現代の民事訴訟では、何について争い、そのために必要な証拠がどの程度そろっているかが、まず「弁論準備手続き」や「争点整理手続き」で明らかにされます。その後、裁判に進み、事実認定が行われ、裁判官によって最終的な判決が下されます。裁判を効率的に行うためのこうした2段階の仕組みは、実は今から2000年ほど前に確立されていたのです。
世界中の法制度に影響を与える
紀元前1世紀から3世紀にかけて確立されたローマ法の概要は、6世紀頃にローマ皇帝がまとめた法典に残されています。また、紀元前に活躍した弁論家キケロの書物からも、当時の法制度を知ることができます。それらをひもとくと、ローマ法が現在の日本や世界の法律に大きな影響を与えたことがわかります。
現在の弁護士の原型ともいえる役職も紀元前1世紀頃に登場し、2~3世紀後に職業として確立されていきました。判決においても現在の裁判制度と同様に、事実認定や証拠をもとに裁判官の自由な判断に委ねられる「自由心証主義」が採用されていました。
2つのローマ法
ローマ法研究は二重性を備えている点が特徴です。ローマ帝国の人々が守っていた実体としてのローマ法と、それらを18~19世紀のドイツ人が研究・解釈したものが同時に研究対象とされているのです。ドイツにおける研究は多大な功績を残し世界中に広まりましたが、一方で彼らが読めなかった、あるいは読まなかった文献も多く存在します。ですから、例えば石に刻まれた碑文や、エジプトから出土するパピルスや羊皮紙に書かれた情報を新たに読み取ることで、これまでの推測が裏付けられることや、定説とされていた考えがひっくり返ることが起こり得ます。それが、ローマ法研究の醍醐味のひとつといえるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
京都大学 法学部 教授 佐々木 健 先生
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民事訴訟学、ローマ法学先生が目指すSDGs
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