水が持つ情報を解き明かす~未来へつなげる環境学の必要性~
未来につながる水質計測
私たちは日々水を使い、汚れた水を下水道に流し、衛生処理して環境に戻しています。そして、人間や動物が生きていく上で好ましい水の環境を整えるために、さまざまな観点から水の計測や分析を行っています。しかし計測できるのは現在の水に限られており、昔よりもどのくらい良くなったのかは正確には判断できません。過去の時代の水の状態を示すデータが残されていないからです。このことからも、水のデータを正確に計測、記録し、50年、100年というスパンで継続することには、次世代の水環境を保つ上で大きな意義があります。
分析技術の向上
水質研究のレベルは日々向上し続けています。日本の水質汚染問題の転機は、1970年代にさかのぼります。当時は環境中に多量の化学物質が放出され、それらが河川に流出し、水環境を汚染することが問題になっていました。1970年代になって法規制が進み、使われる化学物質の量は大幅に減少しましたが、反対に人々の利便性に応じて使われる化学物質の種類は飛躍的に増えています。水質計測においても、微量で多種類におよぶ化学物質を測ることが求められるようになり、さまざまな計測技法が開発されてきました。
遺伝子計測がもたらす大きな可能性
新たな水質計測の方法として近年注目されているのが、遺伝子を用いる計測です。2017年にある研究グループがボルネオ島にある動物の水飲み場の水を採取し、そこに含まれる遺伝子情報を解析したところ、絶滅が懸念されているオランウータンがそこを利用していることがわかりました。つまり、直接観測したり、写真に収めたりする前に、周辺にいる動物の存在が確認できるようになったのです。
これを応用すれば、例えば川の上流から下流までに生息する魚や植物プランクトンの種類、および周囲の生態環境を、実際に捕獲することなく割り出すこともできるようになります。水環境と生物の研究をつなぐ技法として、大きな役割が期待されています。
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先生情報 / 大学情報
県立広島大学 生物資源科学部 生命環境学科 環境科学コース 教授 西村 和之 先生
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