メンタルヘルスソーシャルワークから見る子ども虐待
増える子ども虐待とヤングケアラー
子ども虐待や、子どもが家族の世話をする「ヤングケアラー」が社会問題として注目されています。家族の機能が行き詰まると、親にも子ども自身にも大きな影響が生じます。社会も大きく揺さぶられるために、そうした世帯の保護者はメディアを通じて厳しい社会の目にさらされ、さらには児童相談所へのバッシングなど支援機関にも厳しい重圧がかかることになりがちです。
問題はどこにある?
しかし、親や支援機関を非難するだけで、あるいは子どもを保護するだけで、この問題の根本解決ができるわけではありません。これらの問題において、支援の対象は児童福祉の立場から見れば「子ども」、精神保健福祉の領域では「親」となることが大半です。しかし、本当は「世帯ぐるみ」、「地域ぐるみ」でとらえる必要があります。虐待をした保護者の約3割が自身も過去に虐待を受けた「被虐待児」であり、約7割の家庭には貧困、社会的孤立がみられます。加えて、保護者に何らかのメンタルヘルス問題が見られることも多いのです。つまり、多くの様々な困難が世帯の中で複合し絡み合い、さらなる困難を引き起こしているのです。
安心感を子ども、家庭、社会に拡げる「応援」を
だからこそ、多様な分野の支援者が連携して、幅広い支援をする必要があります。そして、困りごとを単に個人の問題とせずに、社会全体の問題としてとらえることが大切です。例えば、メンタルヘルス問題があるからと全てを医療だけに任せるのではなく、精神保健福祉士や社会福祉士(ソーシャルワーカー)による生活支援とも連携し、当事者である親や子どもと一緒に考えていくことが大切です。「苦労」を語り「応援」を活用してもらえる関係性をつくり、一緒に考え、暮らしの安定に取り組み、自信を取り戻して生活の主人公になれるようサポートする。そんな発想と「応援」し合える機能が、社会に求められています。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 人間福祉学コース 教授 松宮 透高 先生
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