吸収されにくかった「健康成分」を効率的に体内に取り入れる研究

吸収されにくかった「健康成分」を効率的に体内に取り入れる研究

たくさん食べても効果はない?

「あの野菜は健康にいい!」という情報を耳にして、ついたくさん食べてしまった経験はありせんか。しかし残念ながら、健康にいい機能性成分を含む食品をたくさん食べても、そのすべてが体に吸収されるわけではありません。
例えば、近年人気が高まっているウコンのサプリには、肝臓の働きを助けたり抗菌力を高めたりするクルクミンが含まれています。しかし、体内に吸収されるのは、摂取した分のわずか数%です。そこで現在、飲んだり食べたりしても吸収されにくい物質を、効率的に体に吸収させるための研究が進められています。

「溶けるようにする」のではなく「輸送する」

食品に含まれる成分は、主に腸で吸収されます。しかし、クルクミンは水に溶けにくいため、腸管から吸収されにくいのです。そこで研究されているのが、タンパク質を分解することで得られる「ペプチド」を、機能性成分と結合させて吸収率を高める方法です。クルクミンを水に溶けるように加工するのではなく、吸収されやすいペプチドで包み込むことによって体内行きの「輸送車」に乗せるイメージです。
タンパク質の分解方法によって何万種類ものペプチドが生成できるので、吸収させたい成分と結合しやすいペプチドを選べば、加工コストも安価に抑えられます。

医学・薬学分野への応用も

宮崎県の名産品の1つであるキンカンには、体の抗酸化力や免疫力を高める「β-クリプトキサンチン」が豊富に含まれているのですが、クルクミン同様、水に溶けにくい成分です。また、水揚げされた魚の血には、不足しやすいミネラルである「ヘム鉄」がたっぷり含まれていますが、これも腸からはわずかしか吸収されません。
これらの機能性成分や、飲み薬にしにくい薬の成分などを、効率的に体内に吸収させられるようになれば、名産品・特産品を生かした新しいタイプの「特定保健用食品(トクホ)」や、新しい服用薬が誕生するでしょう。

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宮崎大学 工学部 工学科 応用物質化学プログラム 教授 大島 達也 先生

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先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたは大学で、どんな研究をしたいと考えていますか? 医薬品製剤も含め、化学物質の製造・加工技術を工学的に研究する領域では、やはり化学の知識が一番大切です。しかし同時に、数学的な解析も必要となるほか、最新の研究論文を理解するには一定レベルの英語力が必須です。論文や研究報告をまとめる文章作成には国語力も求められます。
ですから、もしもあなたが工学部を選びたいと考えているのなら、「理数系だけやっておけば大丈夫」などと考えず、全科目の力をまんべんなく身につけるように頑張ってください。

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