救急車が足りない! 注目される「プレアライバルコール」
救急車が足りない
救急車は限られた資源です。日本のように無料で救急車を利用できる国は世界でも珍しいのですが、高齢化の加速により救急車の要請が増えて余裕がなくなっており、消防行政の課題となっています。
近くの救急車が出払っていて、やむを得ず現場から遠い消防署から出動するケースも増えています。到着から搬送までの現場滞在時間を短くするための取り組みとして、現場に向かっている救急車から通報者に電話をかけて情報を聞く「プレアライバルコール」が注目されています。
何を聞き、どう役立ったかの実態を調査
プレアライバルコールは消防本部によって組織的に行われていることもありますが、救急隊員が個人の工夫と判断で行っていることもあるのが現状です。救急車が到着する前の電話で救急隊員が何を聞き、知り得た情報をどのように役立てているか、実態を明らかにする研究が進んでいます。
現役の救急隊員にプレアライバルコールの実施状況を尋ねた調査では、「傷病者が複数とわかり、現場到着前に応援を呼ぶことができた」「住宅密集地への侵入経路を確認しておくことでスムーズな搬送ができた」など、現場滞在時間の短縮につながる情報が得られていることがわかりました。一方で、固定電話からの通報では折り返し電話をしても傷病者のそばで通話できるとは限らず、容態を聞くのが難しいなどの課題も見えてきました。
傷病者の速やかな処置にもつながる
プレアライバルコールには、傷病者がスムーズに処置を受けられるというメリットもあります。他の医療職種と同様に、救急救命士が現場でできる処置は法律上限られており、投薬をする際は医師から指示を得なくてはなりません。持病や服用中の薬などが確認できれば、現場に向かう救急車から医師に連絡をして、投薬の相談を進めることが可能となります。容態によっては搬送先の病院を探し始めることもできます。調査で明らかになった聞き取り内容とその効果が、これからプレアライバルコールを始める救急救命士の参考になると期待されます。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 医療技術学部 スポーツ医療学科 救急救命士コース 講師 高山 祐輔 先生
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