医学の進歩に欠かせない「医用工学技術」とは?
計測から治療へと発展する医用工学技術
医学の進歩には、さまざまな工学技術が生かされてきました。例えば、心電図の原理は約120年前に開発され、長年医療現場で利用されています。さらにコンピュータの発達にともない、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(核磁気共鳴画像)など、医療用の計測機器が開発されてきました。
また、近年、治療機器もめざましい発展を遂げています。内視鏡手術を遠隔操作で行う手術支援ロボットもその一つです。こうした技術開発を支える学問分野が、医用工学、医用メカトロニクスと呼ばれるものです。
機械と生体組織を接着する技術
工学技術の医療への応用例として、生体組織を接着する技術があります。人工心臓などの機械を人体に埋め込む際に、人体の組織と金属を離れないように接続するのは難しいことです。一つの方法として生体組織を熱して接着する技術があります。料理で、熱した鉄板に肉が貼りついてしまうことがあるように、人間の組織に含まれるコラーゲンが熱によりゲル化し、冷えると固まる、という現象を応用したものです。高温で熱することで、その箇所の細胞はいったん死んでしまいますが、細胞が住んでいる組織構造(部屋のようなもの)はそのまま残ります。回復するとその部屋に再び細胞が入り込み、組織がよみがえります。この方法は組織同士の接着にも使え、針と糸でつなぐよりも、早く接着でき、回復も早いことがわかっています。
医用工学技術の課題
治療機器を開発するにあたっては、いくつかの課題があります。まず、人間の生命に関わる技術なので、安全性を担保しなければなりません。また、私たちの体は熱に弱いので、体内に埋め込む人工心臓のような機器の場合、熱を発生しにくい構造にする必要があります。機器が熱を発生することは、仕事に使われない無駄なエネルギーが熱となって漏れているということです。電気エネルギーを無駄なく運動エネルギーに変換する、熱が発生しない、効率の良いシステムを作ることも、医用工学技術の課題の一つです。
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先生情報 / 大学情報
茨城大学 工学部 機械システム工学科 教授 増澤 徹 先生
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