幸せな社会を実現する「流通」のあり方を考える
生産と消費を再結合する「流通」
「流通」という言葉を聞くと、モノが運ばれる「物流」をイメージする人が多いかもしれません。しかし流通とは、単なるモノの移動だけではなく、社会のさまざまなつながりを示します。例えばある人が作ったものが、ほかの人のものになる所有権の移転、あるいは金銭などの商的な取引、またそれにまつわる政策など、流通にはそういったさまざまな社会構造が含まれます。そこで、生産と消費を再結合する過程と社会構造を俯瞰(ふかん)的に検証し、幸せな社会に貢献する流通のあり方が研究されています。
流通が抱える問題の解消に向けて
流通を支える構造には、さまざまな問題が存在します。例えば農家は、作物を生産することで人々の生活や生命までをも支えています。一方でその収入は不安定で、天候や災害などの影響に苦しむ農家は少なくありません。
また小売業でも、24時間営業を掲げるコンビニエンス・ストアオーナーの長時間労働問題など、流通のあちこちで「誰かの欲求を満たすために、誰かが無理をせざるを得ない」構造が散見されます。流通の研究では、そういった不公平を解消し、誰もが幸せに暮らせる社会の実現が最終的な目標とされています。
商品の背景にある社会構造に目を向ける
流通における問題に目を向けると、中間商人がいなければもっと商品が安くなるのではという考えから、「中間商人は悪」といった表面的な批判を目にすることがあります。商品を売る人がいなければ、生産物が消費者に届けられることはなく、結果的に生産者も収入を得ることができません。またコンビニの24時間営業についても、「24時間営業が悪い」という短絡的な考えではなく、同じ商圏にある店舗が、効率よく運営を続けられるような仕組みを考えることが必要です。
問題を解決するには、生産から販売までを支える政策や法律、金融制度や運営上の仕組みといったインフラを整え、「誰かが得をすることで、誰かが損をする」ことのない流通構造を考えていく必要があるのです。
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先生情報 / 大学情報
広島修道大学 商学部 商学科 教授 矢野 泉 先生
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食料流通学、農業経済学先生が目指すSDGs
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