地域づくり&観光のベースになる、地域と人々を知る人文地理学

地域づくり&観光のベースになる、地域と人々を知る人文地理学

人の行動を中心とする地理学

地理と聞くと、地図や地形をイメージする人が多いですが、人間を中心に地域や場所との関係を考える「人文地理学」という領域があります。人は、地域の中で生活しています。人文地理学では、どういった環境や地域との関係が、人の行動に影響を与えるのかを考察していきます。例えば、長野県は農業において新品種を開発し、新しい形態を生み出すといったイノベーションが起こりやすい地域だと考えられます。これはどういうことでしょうか。

地域環境がイノベーションの原動力に

長野県の名産といえば、リンゴとブドウです。ただ、全国的にはリンゴのトップは青森県、ブドウのトップは山梨県であり、長野県はいつも2番手です。いつまでも2番手ではもうからないため、新しく美味しい品種をつくります。それがヒットして価値が上がると、長野県以外の産地でもつくり始めるため、結局また2番手となり、また新しいものにトライする、といったことを繰り返す地域なのです。
マーケティングや流通、観光といった側面から長野県を検証すると、東京からは山梨県より遠いために不利な位置にあります。そのため、山梨県は観光ワイナリーが盛んですが、長野県では独自性に富んだ小さなワイナリーが増えています。

地域と人を知ることが地域づくりに

このように、その地域の農業ひとつ見ても、流通や出荷形態、市場、戦略など多角的に検証することで、その地域の人がどのような行動をしているのかが見えてきます。さらに、農業が盛んな地域と都心に住み農業や自然に関心のある人とを組み合わせると、「移住」という人の動きが引き起こされます。実際に、東京からほど良い距離感にある長野県では移住者が増えています。
今、地域創生や地域観光が求められていますが、その地域の人たちが地域資源をいかに活用して発展するかが重要です。それにはまず、地域と人を知ることです。どの地域にも必ず、地域の独自性や特性があります。地域を知ることから、観光や地域づくりが始まるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

長野大学 環境ツーリズム学部 環境ツーリズム学科 准教授 羽田 司 先生

長野大学 環境ツーリズム学部 環境ツーリズム学科 准教授 羽田 司 先生

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地理学、観光地理学、人文地理学

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メッセージ

人文地理学は、自由度が高い学問です。固定概念にとらわれずに広い視野で見ると、地域のいたるところに個性があふれていることがわかります。まずは5回「なぜだろう」と問いかけてみましょう。パソコンはなぜ動くのか、部品はどんな仕組みか、どこで作られているのかと質問を繰り返すと、それが「当たり前」ではなく、広い世界が関わっていることがわかります。なぜここに山があるのか、この人はなぜここにいるのか、なんでもいいので、明確でないことを解明していくことが学問の入り口になります。

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長野大学は、1966年に地域の熱い期待を背負って誕生した「地域立」の大学です。本学は地域にある課題を発見し、地域とともに解決していく実践的な学びを大切にしています。地域には豊かな自然環境や歴史が宿る文化遺産、経済を牽引する産業や観光資源、安心して暮らせるまちづくりなど学びの要素があふれています。地域社会をフィールドに、主体的に考える力や、問題に対して多面的に取り組む力を養いながら漠然とした問題を明確化し、逆境に立ち向かっていける足腰の強い人材を育成します。