日本のマンガを守り、将来に残していくために

日本のマンガを守り、将来に残していくために

日本の電子書籍市場はマンガで回っている

書籍の電子化は世界中で進んでいますが、国やジャンルによってその進度はかなり異なります。例えば日本では、マンガの電子書籍化率は55.8%、電子書籍市場の売上においては86.3%を占めているという調査結果が出ました。すべてのマンガが電子化されないのは、その作品、あるいは作者がメジャーであるかないかという事情が存在するほか、作者や出版社の意向、ライセンス問題なども絡んでいると考えられています。

あのマンガが将来読めなくなる?

ところで、日本には「納本制度」があります。これは日本で出版されたマンガを含むすべての書籍を国立国会図書館に納めて保管するという制度で、文化の保護に役立っています。ただ、商用の電子書籍の積極的な納本がスタートしたのは2023年1月であり、ごく最近のことです。そのため、多くのマンガの電子書籍版が国の保護の枠から零れ落ちているかもしれません。マンガという日本にとって重要なコンテンツが、将来的に「消えて」しまう可能性があることから、個別の作品ごと、また、マンガ全体の状況を調査して、把握する研究が進められています。

新作マンガを楽しめるようにするには

この研究に関連し、マンガの流通についての問題提起もありました。例えば、海外に日本のマンガの海賊版が出回ると、本来なら得られるはずだった利益を作者や出版社が受け取ることができないという問題です。また、町の中から書店が消えつつある今、地方に行くほど電子書籍しか手に入らない、つまり半ば強制的に選択肢が限られてしまうという問題です。正当に、公平にマンガというコンテンツが世界に広がれば、作者や出版社も今より経済的に安定して、新しい作品も続々と発表されて私たちを楽しませてくれるでしょう。だからこそ、電子化の過渡期と言われる時期に何らかの手を打ち、マンガを守っていこうと研究が続けられているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

亜細亜大学 経営学部 データサイエンス学科 教授 安形 輝 先生

亜細亜大学 経営学部 データサイエンス学科 教授 安形 輝 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

図書館情報学、メディア情報学

先生が目指すSDGs

メッセージ

電子化されたマンガを読めるストアはたくさんあり、たくさんの人が利用しています。しかし、マンガという日本にとって重要なコンテンツが、電子書籍業界ではどのように扱われているのでしょうか。マンガ好きな私はそこに興味を持って、電子マンガの市場や流通はどうなっているのか、そこに何かしらの解決するべき課題はあるのかと、マンガの全体像をとらえる研究を進めています。その際に重要になるのは、物事を俯瞰(ふかん)して見る姿勢であり、これはどのような研究でも求められるものだと思います。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

亜細亜大学に関心を持ったあなたは

亜細亜大学では「多様な夢に挑み、アジアの未来に飛躍する創造的人材」の育成をめざし、5学部8学科の学士課程教育、国際教育、キャリア教育と軸とした教育体制を整えています。
さらに2023年4月にデータサイエンスと経営学をつなぐ画期的な学びを提供する「経営学部データサイエンス学科」を開設。初年次教育やゼミナールの必修化、留学制度、副専攻制度など、学生一人ひとりの興味・関心に合わせて、柔軟で広い視野を獲得するための多彩な学びを実現するカリキュラムを構成しています。