早口の発話障害、クラタリングへの支援と理解
吃音とクラタリング
吃音(きつおん)は、言葉が滑らかに話すことができない発話障害の一種です。話しはじめの音を繰り返す、途中を長く伸ばす、詰まってしまって音が出てこないという3つの症状が見られます。
また、別の発話障害の1つに、クラタリング(早口言語症)があります。本人は普通に話しているつもりでも、発話が非常に早く、内容を繰り返し、文法的にも支離滅裂な話し方になってしまう症状です。クラタリングは、本来なら吃音と区別して支援されるべきですが、日本では研究が進んでいないために周知されず、吃音と同等に扱われてしまうことが多い状況です。
話し方の特徴とは
吃音と比べてクラタリングは自覚が難しく、相談が遅れる傾向にあります。幼児の頃は、繰り返しの症状は見られるものの、幼児らしい話し方に紛れてしまうからです。しかし、10歳を過ぎて発話能力が高くなり、早く喋れるようになると顕在化し始めます。
最近の研究により、吃音とクラタリングの相違点が明確になりました。例えば、吃音の場合、初めての音読は苦手で詰まり気味ですが、回数をこなすほど慣れてスムーズになります。一方でクラタリングは、初めて読む時のパフォーマンスが最も高く、回数を重ねると注意が散漫になって繰り返しや読み間違えが増え、詰まる場面が増えるのです。
聞く側の理解
クラタリングの人へは、サウンドスペクトログラムという音声の波形を表示するソフトを用いて、発話の特徴を視覚的に捉えながら自分の話し方の理解を進めるといった支援が行われます。自己理解が進めば、自分で話し方がコントロールできるようになります。改善していくには、周囲の理解も大切です。じっくりと聞く態度を見せるだけで、吃音やクラタリングの人は話しやすくなります。
吃音のある人は人口の約1%いるとされています。多様性を持つ人たちが共に暮らす社会においては、障害についての相互の理解がとても重要なのです。
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先生情報 / 大学情報
筑波大学 人間学群 障害科学類 教授 宮本 昌子 先生
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