地域食材の機能性を解明し、付加価値を高める
生活に密着した「食」の化学研究
食品(機能)化学では、身近な食品に含まれる成分を化学的に分析します。昔から「体に良い」と言われてきた食品でも、現在の技術を駆使して科学的根拠を示せば付加価値が高まり、生産者側にも消費者側にもメリットとなります。
機能性表示食品の制度では野菜などの生鮮品も対象に含まれ、機能性を表示することが可能となりました。実際に表示を目指すためには、根拠となる研究結果が必要です。そのためには、大学、地域の生産者、自治体、民間企業が協働して研究を進めていく必要があります。
地域で生産される野菜や加工食品と機能性
一次産業の盛んな高知県の県産品を例にとってみましょう。全国的に市場シェアの高い、ニラ、ナス、ショウガ、ミョウガ、ユズなどの農産物は、研究者と地域が連携し、機能性を調べて共有しています。また、高知といえばカツオですが、沿岸の日戻り一本釣り漁で揚がるカツオを年間を通して調べ、疲労回復につながる物質の季節変動をデータ化するといった取り組みが行われました。山間部の町で作られる伝統的な加工品・碁石(ごいし)茶は、この地域特有の発酵茶ですが、機能性評価とそれに関わる物質を解明するなど、生産量は少なくても地域の存続にもつながる付加価値が得られています。研究結果を発展させるために、動物試験や人体での薬理活性を試験するなど、医学や薬学の分野とも連携しているのです。
ニラ特有の香りが示すピロリ菌への抵抗力
こうした生鮮品の機能性研究の過程で、ニラ特有の香りの成分に、胃がんの原因となるピロリ菌を減らす、あるいは増殖を抑制する「抗ピロリ菌活性」があることがわかりました。ピロリ菌は酸性である胃の中にすめる唯一の微生物とされ、通常は薬を使って除菌します。ニラに関する研究例は少なく、高知県産品を研究題材とすることで世界的にも独自性・優位性のある研究が生まれているのです。
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先生情報 / 大学情報
高知大学 農林海洋科学部 農芸化学科 教授 島村 智子 先生
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食品化学、食品機能化学先生が目指すSDGs
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