どうしたらマグロを食べ続けられる? 持続可能な漁業とは

どうしたらマグロを食べ続けられる? 持続可能な漁業とは

減り続ける天然マグロ

世界的な日本食ブームで、マグロは乱獲され激減しています。マグロは海の食物連鎖の頂点にいる魚なので、数はもともとそんなに多くありません。しかも、マグロを獲るような沖合の漁場では、複雑な地形はなく魚の隠れ場所もないため根こそぎ獲られてしまい、どんどん数が減っています。
一方、サンマは数の多い魚です。日本人が毎週サンマを食べたとすると、年間70万トン消費する計算になりますが、実際は20万トンしか食べていません。しかし、マグロは、漁獲、輸入を合計すると、50万トンにのぼります。

養殖マグロとサバの関係

それでは養殖マグロを増やせばいいのでしょうか。養殖マグロのえさに使われるのはサバです。1キロのマグロを育てるには、15キロのサバが必要だと言われます。つまり、エネルギー効率が非常に悪いのです。しかしサバ1キロの値段の15倍を超える値段でマグロが売れれば利益は出ます。ここには、人間にたくさんの魚(タンパク量)を供給しようという発想はなく、利益をより多く出すという発想があります。
実は、このサバは日本近海で獲られた子どものサバです。子どものサバは脂がのっていないのでおいしくなく、食用にはならないため安く売られてマグロのえさになるのですが、もしもこの子どものサバが大きくなるまで待って獲ったとしたら、1尾ずつが高い値段で売られ、15倍を超える値段でマグロを売るよりも利益が出るかもしれません。

持続可能な漁業のために

漁業者の中には、「魚は人間が何もしなくても増えたり減ったりするものだ」と言う人がいます。それは事実ですが、だからといって何もしなくてよいということにはなりません。マグロを少し控えてサンマを食べるようにすれば、マグロの減少に少し歯止めがかかるかもしれませんし、「天然マグロが減るなら全部養殖でまかなえばいい」という議論も極端なものだということがわかります。
このような議論を科学的に研究する環境生態学は、持続可能な漁業を考えるために、これからますます重要になっていくでしょう。

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横浜国立大学 理工学部 建築都市・環境系学科(環境情報研究院) 教授 松田 裕之 先生

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環境生態学

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メッセージ

私は子どものころ、宇宙の年齢や大陸移動説など不思議なことに「何でこんなことがわかるんだろう?」と感動していました。そういった素朴な疑問が私を育てましたし、あなたを育てるのです。ですから知的好奇心をぜひ大事にしてください。それと同時に、常識を養うことも大事です。頭でっかちになると、極端なことに、はしってしまうからです。
生物多様性を守ることと文化の多様性を守ることはどちらも重要です。異文化に接したときにはショックを受けるものですが、それを受け入れる「作業」そのものが人間の価値観を豊かにするのです。

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横浜国立大学は、高い国際性と実践的な学問を尊重し、社会に開かれた大学をめざします。全学部の学生がひとつのキャンパスで学び、学部の垣根を越えた交流ができ、国立大学には数少ない経営学部も置かれています。新しい潮流を起こして21世紀の人類社会に貢献できるよう、社会からの要請を的確に把握し、国民から委ねられた資源を有効に活用しつつその活動を開放し、社会の期待に応えます。