「植物」のシミュレーションで、未来の気候変動を予測
葉っぱが気候を変える?
植物は気候に大きな影響を与えています。例えば森林を切り開いて畑を作ると、空気が乾燥しやすくなります。通常の森林では、葉の総面積は地面の面積に比べ約7倍も存在します。一方畑の場合、葉の面積は地面の3倍にすぎません。その結果葉から蒸発する水分量が減り、空気が乾燥してしまうのです。また、吸収できるCO₂の量も減るため、温暖化が促進されます。広範囲で同様のことが起これば、世界の気候を変化させます。
CO₂吸収量予測の手掛かり「クロロフィル蛍光」
将来的な気候変動を予測するヒントのひとつが、大気からCO₂を吸収する光合成の速度です。そこで植物が光合成をするときに発する「クロロフィル蛍光」をリアルタイムで観察し、光合成スピードを測定する技術が研究されています。葉は曇りの日であれば、吸収した太陽光エネルギーをすべて光合成に利用可能です。しかし晴れて日差しが強いと、葉の中で太陽光エネルギーが余ってしまいます。すると葉は残ったエネルギーを外に逃がそうと赤いクロロフィル蛍光を放出するのです。クロロフィル蛍光は太陽光が強すぎて肉眼では見えませんが、赤色の光を放っていて、宇宙からも計測できます。地上での観測データと人工衛星から送られてくる情報を利用し、光合成速度や気候変動を予測するコンピュータシミュレーションモデルの作成が行われています。
相手は自然だけではない
地球の陸地は約3分の1が農地なので、自然の生態系だけを対象にしていては気候変動を正確に予測できません。そこで作物の収穫量などを世界規模でモデリングする研究も行われています。モデリングでは大気汚染やオゾン濃度なども考慮しなければなりません。例えば工業都市で濃度が高くなるオゾンは植物の光合成にも影響を与えます。オゾンを大量に浴び続けた植物は気孔を一部閉じてしまうからです。将来どの程度気孔が閉じられてしまうのか、その結果、気候にはどの程度影響するのかなどのシミュレーションも行われています。
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先生情報 / 大学情報
北海道大学 農学部 農学研究院 連携研究部門 連携推進分野 准教授 加藤 知道 先生
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