求愛のエラーがもたらすテントウムシたちの“格差”社会
生き物たちもエラーをする
自然界では生き物の周りに他の種類の生き物たちがたくさんいて、食う食われるの関係やエサを取り合う関係、お互い得する関係などでつながり合っています。こうした「相互作用」の役割を明らかにするのが生態学という学問の目標です。相互作用の中でも「求愛のエラー」は、ある種類のオスが別の種類のメスと交尾しようとする行動を指します。こうした行動にどのような意味があるのか、ほとんど分かっていません(教科書や参考書にも載っていないはずです)。
よく似たテントウムシでの求愛のエラー
ナミテントウはさまざまなアブラムシを食べる身近な昆虫です。一方、見た目のそっくりなクリサキテントウは松の木にしか生息しておらず、珍しい昆虫です。両種はよく似ているため、求愛のエラーが起きてしまいます。特にクリサキテントウは、ナミテントウが周りにいると、自分の種類どうしで交尾できず正常に子孫を残せません。そのため、これらの2種は同じ環境でうまく暮らせそうにありません。つまり、求愛のエラーはエサをめぐる競争と同じように、お互いの種類を別々の生息環境(ニッチ)に追いやる役割があると考えられます。
すみわけの鍵を握る相互作用
松の木に生息するクリサキテントウは、捕まえにくいアブラムシだけを食べて暮らしています。本当はナミテントウのように、栄養のあるアブラムシを食べて成長したいはずです。しかし、ナミテントウに出会うと求愛のエラーが起こってしまうために、クリサキテントウはあえて松の木に特化していると考えられます。つまり、求愛のエラーが両種の「すみわけ」の原因になっている可能性があります。
このように、生態学では野外での観察や室内での実験を通して、自然界のさまざまな相互作用の役割を明らかにし、身の回りの生き物たちについての理解を進めていきます。
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先生情報 / 大学情報
高知大学 農林海洋科学部 農林資源環境科学科 准教授 鈴木 紀之 先生
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